韓国、中国、日本の更新世マカク化石
韓国中部の忠清北道の2カ所の中期〜後期更新世の洞窟堆積物(Durubong、Gunang)からみつかっていたマカクの化石について研究しています(上写真)。中国各地からみつかっている化石マカク類や日本に生息するニホンザルと比較検討したところ、かなり大型の種であったことが判明しました。韓国のマカク化石は標本数も少なく、中国の化石種も含めて種を決定するのは現時点では難しいのですが、ニホンザルの祖先種と考えて良さそうです。 また中国各地の鮮新世〜更新世の霊長類化石の検討も進めています。中国でみつかっている前期〜後期更新世のマカク化石は、従来大型のMacaca anderssoniと中型のM. robustusに分けられてきましたが、遊離歯化石のサイズだけでは区別することが難しく、両者を同一種とする研究者もいます。大学院生の伊藤毅さんの研究では、M. anderssoniの頭骨の形態はニホンザルが含まれるカニクイザル種群ではなく、トクモンキー種群の系統に属する可能性が強いことがわかってきました。一方、M. robustusとして扱われてきた化石種はニホンザルの祖先と考えて良さそうですが、そもそもの同定に信頼性が欠けていて一概には言えないようです。例えばいくつかの標本では、マカク化石と同定されていたものがコロブス類(Colobinae)であることが判明しています。中国大陸でのオナガザル科のサルの進化史はまだまだ複雑なようです。また日本各地の更新世のニホンザル化石の形態解析も進めています。
最近の論文
- Lee, Y.-J., Takai, M., Jin, C. (in press) Middle to late Pleistocene macaque fossils from central Korea. In Lee, Y.-J. and Drozdov (eds.) “The Proceedings of the 17th International Symposium: Suyanggae and Her Neighbors.” Krasnoyarsk State Pedagological University.
- 柏木健司・阿部勇治・高井正成(2012)豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用.霊長類研究、28: 141-153.
- 西岡佑一郎・姉崎智子・高井正成・岩本光雄(2011c)後期更新世以降のニホンザル(Macaca fuscata)の大臼歯計測値に基づく時間的・地理的形態変異.哺乳類科学 51(1):1-17.
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