Nishimura_lab.
■ 言語の起源を探る
ヒトの進化
chimpanzee_MRI
「昨日の試合、見たか?
「ああ、見た見た...散々やったな。」
「例年通りやな。」
「まぁな...、今年も終わったな....。」
    左上写真は毎日新聞社・平田明浩氏撮影

今年もこんな会話してませんか?わたしたちヒトは、 これくらいの会話なら日ごろさらりと(重苦しく?)やり取りしています。ふつう「言語」というと、こういった「話しことば」によるやりとりをイメージします。しかし、こんな簡単な話しことばも、他の霊長類には到底まねのできないヒト特有の能力です。ヒトは、1息の「短い間」でも「多くの音」を「連続的に」作り出しています。1息に1音ずつ作っていては、まったく話しにならないでしょう。音声は、肺やのど、舌、口などの音声器官の運動により作られます。ヒトの話しことばは、長い霊長類の進化の過程で、音声器官やその運動制御機構がさまざまな適応を積み重ねて、人類系統でそちらが一つになって話しことばが進化しました。私たちは、肉眼解剖やコンピューター画像法(CT/MRI)、音声行動実験、ヘリウム音声実験、声帯振動観測などさまざまなアプローチで、ヒトと他の霊長類の音声器官の形態や運動を比較して、ヒトの音声器官の形態学的特徴や運動能力の特殊性を明らかにしようとしています。その系統発生を復元することで、なぜ、どのように言語が進化したのかというプロセスを知ろうとしています。

◆立命館大学徳田研究室、(公財)日本モンキーセンター、ウィーン大学認知生物学部、ウィーン国立音楽大学、英・アングリアラスキン大(ケンブリッジ大) 等と共同で研究を進めています。

■ 鼻腔の機能形態学
−真猿類の起源と進化−

primates_CT
サルは視覚が発達しているといいますが...
    上はティティ、右はヨザル、下はオマキザル

真猿類の進化では眼が注目されます。霊長類は、大別して真猿類と原猿類の2つのグループに分けられます。真猿類では、眼球が納まる眼窩が、ソケットのような形になって眼球を包み込んでいるのに対して、原猿類ではリング状の枠があるだけで眼球をしっかり包み込む構造がありません。真猿類は、このソケット状の眼窩が顔の中央に寄って、視覚が発達したグループと考えられています。一方、眼窩の間には嗅球や鼻腔など、嗅覚を支える器官があります。嗅覚は主に、鼻腔の上部で機能していますが、鼻腔全体は嗅覚のみならず呼吸気の温度湿度調整など生命・健康維持に重要な機能をになっています。私たちは、霊長類の鼻腔構造をコンピューター画像法(CT/MRI)などを使って比較し、さらに数値流体力学的シミュレーションなどを駆使して、哺乳類における鼻腔形態と機能の多様化のプロセスを明らかにしようとしています。そのような研究から、霊長類や人類の進化の道筋がみえてくるかもしれません。

◆岩手医科大学、北陸先端技術大学院大学等と共同で研究を進めています
■旧世界ザルの進化
−化石の内部構造による系統分析−

Fossil CT
 
コンピューターで化石を見てみよう!
       

現在、サル類は、ユーラシアでは南アジアから東南アジア、日本を含む東アジアの南部にしか生息していませんが、中新世後期から更新世とよばれる時代にはヨーロッパや中央アジア、中国の東北部や韓国、さらにはシベリアにも生息していました。当時は、それらの地域は、現在より温暖・湿潤で、サルが棲める森林が広がっていたのでしょう。旧世界ザルは、大きくコロブス類とオナガザル類に分けられます。現在、ユーラシアのコロブス類は南アジアから中国南部にかけて分布しています。またオナガザル類はニホンザルを含むマカクMacacaのよばれるサルのみです。ユーラシア各地の中新世後期から更新世の地層からは、数多くの霊長類化石が産出しますが、その中には分類群がはっきりしないものや、研究者によって分類が異なるものもあります。従来、化石の分類・系統分析は、表面からうかがい知れる特徴に頼らざるを得ませんでした。貴重な標本です、壊すなんてもってのほかです。最近、CTが比較的手軽に利用できるようになりました。私たちは、CTとコンピュターグラフィック技術で化石の内部構造をモニター上に可視化して、その形態学的特徴を用いて、議論のある霊長類化石の分類の確定に挑んでいます。そのような分類の整理や系統分析により、現生の旧世界ザルがどのようにユーラシアに進出し、そして現在の分布にいたったのかという進化プロセスを知ろうとしています。

 
◆ニューヨーク市立大学、パリ国立自然史博物館等と共同で研究を進めています  
     
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