京都大学

霊長類研究所
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進化形態学とは

ヒトを含む各種霊長類の形態を、生活様式や機能との関連も考慮しながら比較研究し、霊長類および人類の進化の解明をめざしています。

そのための研究内容は、実験室内のものからフィールドでの調査まで多岐に渡ります。実験室内では、主に霊長類の形態的基本特性、姿勢とロコモーション様式、成長の様相、種内変異、形態的遺伝特徴などについて、生体計測、骨格観察および計測、比較解剖、生機構学的分析といった手法を用いて検討しています。

また、フィールド調査にも積極的に出ており、人類・霊長類の進化の直接的証拠となる化石の発掘や、アジア地域でのマカク類の分布調査、ロコモーションの観察とビデオによる計測などを行っています。このため、分野のメンバーの活動は、アフリカ、東南アジア、中国大陸など、さまざまな地域に広がっています。





研究材料、装置




骨格標本室(左上)、医用CT装置(共用)(右上)、pQCT装置(左下)、簡易NIRS装置(右下)
お隣の系統発生分野と協力して、多数の骨格標本や、液浸標本を作成、維持、管理しています。霊長類の骨格標本は約10000点、液浸標本は約1000点、霊長類以外の脊椎動物標本も多数あります。

生きた霊長類も研究対象です。ロコモーション実験、生体計測などで活躍してもらいます。

筋骨格系の計測や観察には、いろいろな装置・道具を使います。基本は熟練した目とノギスですが、骨の内部構造を見たい時、骨密度を調べたい時は、pQCT装置を用います。霊長類研究所で共有している医用CTや、マイクロCT、MRIも有用なツールです。

ロコモーション運動計測には、高精細ビデオ、床反力計、簡易NIRS、KINECTなどを用います。






現在行なっている研究例



 
ニホンザルの骨格(左)、霊長類大腿骨のCT画像(右)
 
スローロリス大腿骨のpQCT画像(左)、霊長類4種の足内筋浅層のスケッチ(右)

霊長類の運動器の機能形態学

なぜ生き物は様々な形をしているのでしょうか?生物の形やその進化を、機能と関連付けて考えるのが機能形態学です。

霊長類の進化を理解する上で機能形態学は有効なツールとなります。ある機能を果たすにはそれ相応の形態が必要であり、逆に、ある形態を持っていれば、特定の機能を果たし得ると推測できるからです。

我々の研究室では、霊長類の筋や骨格の形態を、CT、MRI、肉眼解剖的手段等で調べ、行動と照らし合わせること、他の種と比較することで機能と形態の関係を確立し、霊長類の進化と適応、およびその背景の理解を目指しています。
(興味を持った方は、 平崎准教授のページへ)



マカクとチンパンジーの成長と加齢変化

成長と発達のパターンは種によって異なります。その動物種がどのような過程を経て成体になり、そして年老いていくのか。ライフサイクルを知ることは霊長類の理解に欠かせません。我々は、マカクおよびヒトに最も近いチンパンジーを選び、彼らのライフサイクルを調べることで、ヒトの成長についての理解を進めようとしています。

また、最近は、特に骨の加齢変化に注目し、マカクサルの骨密度の計測、変形性関節症出現頻度の観察、骨代謝マーカーの計測なども行っています。
(興味を持った方は、 濱田教授のページへ)




ベニガオザルの母子




ベニガオザルの四足歩行の分析

霊長類ロコモーションの運動学的分析

動物は何故、そのように歩き、木に登り、跳躍をするのでしょうか?ロコモーション(身体の位置移動:歩行など)は動物の最も基本的かつ重要な活動のひとつで、そこにはその種の持つ身体形質とその種が棲む環境の両方が密接に関わります。我々は、霊長類の進化と適応を理解する一助として、彼らのロコモーションを運動学的に分析しています。そうした情報は、ヒト独自のロコモーション、つまり直立二足歩行の起源と進化に関する手がかりをもたらすと期待できます。
(興味を持った方は、 平崎准教授のページへ)


ニホンザル二足歩行のスティックフィギュア


霊長類のナチュラルヒストリー

形態とゲノムに基づいて、霊長類の系統関係、集団史、歴史生物地理を研究しています。分子データだけでなく形態データを併用することで、化石種を含めた霊長類の体系を明らかにしようとするところに、私たちの研究の特徴があります。また、系統や集団史の推定にとどまらず、それらを土台として、形態の多様化のメカニズムとプロセスを明らかにすることを目指しています(下記のテーマに続きます)。
(興味を持った方は、 伊藤助教のページへ)


ニホンザルとその近縁種の集団構造



ヤクニホンザル
形態的にも遺伝的にも分化している
形の多様性の遺伝的基盤と進化生態学的意義

形の多様性はなぜ・どのように形成されたのでしょうか?形態的特徴は必ずしも機能適応の産物ではなく中立に進化したものも多くあるはずです。私たちは,幾何学的形態測定学、量的遺伝学、種間系統比較を用いることで、霊長類の頭蓋の多様化に自然選択と遺伝的浮動がどの程度寄与したのか、種間交雑がどのように影響したのか、遺伝的・発生的拘束がどのような制約を与えたのか、どのような生態的要因が影響したのか、を明らかにしようとしています。
(興味を持った方は、 伊藤助教のページへ)



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