English

事業報告

事業番号:25-008

タンザニアの疎開林に生息する野生動物の行動と生態に関する研究

報告者: 飯田 恵理子

期間: 2013/6/5 - 2013/8/5

 タンザニア西部のミオンボ疎開林は、熱帯雨林からアカシア・サヴァンナに移行する位置にあり、両地域に近縁な動植物が混在する特異的な環境である(Kano, 1971、 Moore, 1994)。この地域はアフリカ大陸におけるチンパンジー分布域の東限であることから、チンパンジーの研究が盛んに行われてきた。その一方で、チンパンジー以外の哺乳類の生息実態やその生態についてはほとんど調査されていない。しかし近年、ミオンボ疎開林は農耕や伐採などの人間活動により、本来の生態環境が急速に縮小しつつある(Abbot and Homewood, 1999)。こうした理由から、疎開林という生態系を理解し保護する上でこの地域に生息している哺乳動物相や植生を把握することは重要である。そこで本研究では、チンパンジーが棲息するタンザニアの疎開林(ウガラ地域)おいて哺乳類が多く生息する岩場周辺を中心に哺乳動物相の基礎的なデータを収集するとともに、とくに岩場の主要な生息動物であるブッシュハイラックス(Heterohyrax brucei)の行動と生態を明らかにすることを目的とした。これまでの申請者の研究からウガラ地域において生息が報告されていなかった哺乳類が確認されている。また、ブッシュハイラックスは昼行性であるが、調査地域の疎開林では夜間も活動を行っていることや、他の哺乳類と巣穴を共有することが明らかとなっている。疎開林の哺乳動物相を調べ、さらにブッシュハイラックスの生態について詳細に調べるためには、実際に対象動物が生息している派遣先での現地調査が不可欠であった。

 申請者は、2013年6月〜8月にウガラ地域において調査を行った。

哺乳動物相の全体的把握のために、週に1度の糞センサスをおこない、トランセクト上の哺乳動物の糞の位置を記録した。直接観察についても可能な限り行った。また岩場に自動センサーカメラを設置し生息する哺乳動物相の把握を試みた。これらの結果から、ウガラ地域においてこれまで生息の確認されていなかった哺乳類種さらに1種確認した。

ブッシュハイラックスの調査では、オスとメスの各1頭捕獲することができた。捕獲した個体に発信機を付け、ラジオテレメトリー法を用いて個体追跡調査を行った。さらに、各個体が利用する巣の出入り口に自動撮影カメラを仕掛け、社会構造についての情報を集めた。その結果、オスはメスよりも広い行動域を持つことが明らかとなった。また、単独で行動するオスに対し、メスは複数のメスやそのコドモと共に行動していることが明らかになった。


ハイラックスのオトナオスの様子


ハイラックスのオトナメスの様子

HOPE Project<>