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事業報告

事業番号:25-002

野生ボノボの生息地の植生情報の収集

報告者: 寺田 佐恵子

期間: 2014-1/8 - 2014/3/10

 アフリカ大陸の熱帯林は、アジア及び南米の熱帯林に比べて降水量と土壌養分が少ないことから、樹高が低く林床の草本量が多い。また、密林と疎林、サバンナなど、植生が一様でない。このような植生の特徴は、大型類人猿の餌資源の利用可能性(availability)を特徴付け、大型類人猿の群れの遊動に影響していると考えられる。今回の派遣先では、大型類人猿ボノボの複数グループを対象に、グループ追跡による数年分の遊動場所と採食行動の記録が蓄積されている。しかし、ボノボの広域な遊動域内の植生に関する環境データの収集は進んでおらず、植生が遊動に与える影響を定量的に評価した研究はほとんどない。このため、本派遣では、対象地内の衛星画像の特徴と実際の植生を関連づけ、広域の植生を明らかにすることを目指し、位置情報を伴った形で現地の植生情報を収集する必要があった。また、日本国内の研究者によるアフリカでの生態学研究は極めて限定的であるため、アフリカでの研究経験を豊富に有するフランスの研究機関において、植生や大型類人猿に関する研究者との意見交換や施設見学による情報収集が必要であった。

 コンゴ民主共和国赤道州ルオー学術保護区ワンバ調査地において、大型類人猿ボノボの遊動域の餌資源分布を明らかにするために、同国生態森林研究センターのスタッフと共に、ベルト状トランセクトを用いた植生調査と特定エリアの現地踏査を行った。調査は、原生林・二次林・湿地林という既存の三つの森林タイプごとに、衛星画像の特徴との紐付けを目標に実施した。原生林では、連続的な森林の変化とその特徴を明らかにするためにベルトセンサスを行い、ベルト内の樹冠の開空度と高木層を占める樹木の種・サイズを調べた。二次林及び湿地林では、衛星画像で特徴的な色や形状を示した場所の現地踏査を行い、焼き畑耕作地・休耕地・湿地草原などの場所を確認した。また、首都キンシャサではカウンターパート機関の研究者との意見交換を行い、フランスではエコール・ノルマル・シュペリウールと自然史博物館を訪問し、アフリカの大型類人猿または植生についての研究に関する情報収集を行った。


Field survey in swamp forest


Visit of Ecole Normale Superieure

HOPE Project<>