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事業報告

事業番号:24-010

コロブスの社会機構の解明:ゲレザの群れ構成の多様性

報告者: 松田 一希

期間: 2012/9/20 - 2012/11/19

 アジア、アフリカ産コロブスの中には、「単雄複雌型」を群れの基本としながら、時に「複雄複雌型」をも形成する、柔軟な社会的特性を持つ種がある。このような社会構造の柔軟性には、餌資源量や捕食圧といった要因が関係していると示唆されているが、未だ確固とした結論は出ていない。単雄複雌型から複雄複雌型、またはその逆への社会構造の変異が、どのような機構で生じるかを解明することは、霊長類全体の社会進化を考察する上での重要な情報を提示する。

 アフリカ産コロブスの中でもゲレザは、その社会構造が柔軟に変化することで知られる。また通常は難しいとされる、霊長類の捕食に関する観察も、ゲレザはチンバンジーによる高い捕食圧に曝されていることから、捕食圧の数値化が可能である。つまり、コロブス類の柔軟な社会構造の解明において、ゲレザは重要な種だといえる。そこで申請者は、長期調査地が維持され、ゲレザの観察が比較的容易なウガンダのカリンズ森林において、ゲレザの野外調査を行う必要があった。

 申請者は、2012年9月20日から11月19日にウガンダへ渡航して研究活動を行った。マケレレ大学の研究者から、ゲレザの生態、社会に関する情報をカンパラで収集した後に、調査地であるカリンズ森林にて野外調査を行った。先ず、調査地内に作られている調査路を歩き、ゲレザの群れの分布を把握した。その後、複雄複雌型のゲレザの群れ1つに焦点を絞り、人付けと行動観察を行った。多くの時間を人付けのために費やしたが、1カ月ほど経過したあたりから、比較的詳細な観察が行えるようになった。ゲレザの行動パタンは、コロブス類全般で見られるパタンに類似していた(休息時間が一日の6割以上を占める)。休息時間は多いものの、その移動パタンは、数種類の選好性の高い食物種に影響されているようだった。そこで、餌資源量がゲレザの移動パタンにどのように影響を及ぼすのかを検討するため、植生調査も行った。また、申請者が不在の期間にも、現地の調査補助者によって定期的な行動観察、フェノロジー調査が行えるような基盤も整えた。


個体追跡を行っているゲレザのオトナ雄


好物のCeltis durandii(アサ科)の若葉を採食するゲレザの雄

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