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事業報告

事業番号:23-014

アカゲザルの動物福祉にかんする実験研究と環境エンリッチメントについての調査

報告者: 小倉 匡俊

期間: 2011/12/3 - 2012/3/1

 飼育動物の福祉に対して配慮することは、動物の飼育に関係する者の果たすべき責務である。日本でも近年は飼育野生動物の福祉に配慮し、環境エンリッチメントにも積極的に取り組んでいる動物飼育施設が増えてきている。しかし、動物実験施設での環境エンリッチメント研究の事例は少ない。また、動物福祉への配慮の元となる知見の多くを海外の飼育施設に頼っているのが現状であり、海外の動物実験施設における環境エンリッチメントの実施の現状についての情報を収集することは、今後の日本の動物実験施設における動物福祉への配慮に大いに役立つと考えられる。滞在したオレゴン国立霊長類研究センターは、アメリカ合衆国に8施設が存在する国立霊長類研究センターのうちのひとつであり、2011年には国際エンリッチメント会議の開催を担当するなど、動物福祉への配慮と環境エンリッチメントの実施に特に注力している施設である。受け入れ先は行動管理部門であり、環境エンリッチメントの実施と行動指標を用いた評価、ハズバンダリートレーニングの実施などを担当している。エンリッチメント・コーディネーターも所属している部門であり、実験動物をして飼育されている霊長類を対象とした環境エンリッチメントについての実験と動物福祉への配慮についての情報収集をおこなうための滞在に最適な施設である。

3ヶ月の滞在期間のうち、最初の1ヶ月間を動物実験施設における動物福祉への配慮についての情報収集に充てた。まず、受け入れ先である行動管理部門のスタッフの方々の仕事を一通り見せていただいた。その後、エンリッチメント・コーディネーターの方に付いて環境エンリッチメントの実施やその他の実践作業について指導していただいた。また、平行して自分がおこなう実験的研究の準備作業を進めた。続く2ヶ月間を利用して、アカゲザルを対象とした動物福祉にかんする実験的研究をおこなった。アカゲザルを対象に難易度の異なる給餌フィーダーを呈示し、採食時間の延長に与える効果を評価した。また、若齢個体と老齢個体を比較し、採食エンリッチメントにおける加齢の効果を検討した。また、滞在中にオレゴン動物園のデイビッド・シェパードソン博士を訪ね、動物園における類人猿を対象とした環境エンリッチメントの実施についての情報交換をおこなった。

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