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事業報告

事業番号:22-003

アジアの新生代堆積物から産出した霊長類を含む哺乳類化石群集の比較

報告者:西岡 佑一郎

期間:2010/12/28 - 2011/02/10

ミャンマー中部の新生代堆積物からは多くの哺乳類化石が産出している.特に,近年霊長類研究所が調査しているチャインザウク地域,グウェビン地域のイラワジ層からは,狭鼻猿類のコロブス類(Trachypithecus?,Semnopithecus)の化石が発見されている.本研究課題では,ミャンマー中部のコロブス類を含む哺乳類相の変遷と環境変化を明らかにすることを目的とした.
ミャンマーのイラワジ相はインド・パキスタンの上部シワリク相(ドゥクパタン〜ソーン相)に対比されているので,両者の哺乳類化石を比較する必要があった.また,他の東南アジア諸国や中国,台湾の哺乳類相との関係を調べるため,東アジアから発見されている化石標本とも比較していく必要があった.

台湾では,台中国立自然科学博物館のChang博士と協力して,南部の墾丁国家公園に位置する洞窟を調査した.その結果,マカク属を含む多くの哺乳類化石が産出し,中には後期更新世の群集と思われる種も含まれていた.発掘後は博物館にて,得られた標本の予備的なデータを取るとともに,14C年代測定用サンプルを選別した.今回の化石産地は今後も継続的な調査を予定しており,共同研究の方針についても話し合った.
インドでは,北部に広がるシワリク層から産出している哺乳類化石の形態データを収集した.また,本層はパンジャブ大学の近郊にも分布しているため,対応者のPatnaik博士とともに野外巡検を行った.今回のインド調査で得られたデータはミャンマーの哺乳類化石を研究する上で非常に有意義な比較データとなった.
タイのコラート化石博物館では,ミャンマー産およびタイ産の哺乳類化石の形態データを収集した.予めインドで得たシワリク相のデータを所持していたため,南アジアと東南アジアの哺乳類化石を比較することができた.また,今後コラート化石博物館の研究者とともに共同研究を進めていく点についても話し合い,博物館近郊の化石産地も訪問した.


墾丁国家公園内の龍蝦洞にて発掘調査中.


シワリク化石公園.
現在は部分的に森林帯が広がっており,ハヌマンラングール等も生息している.


コラート化石博物館近郊の哺乳類化石産地にて,ウシ類の大腿骨を発見したところ.

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