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事業報告事業番号:21-005 ウガンダ共和国・カリンズ森林に生息するオナガザル類の採食生態の調査 報告者:辻 大和 期間:2009/10/25 - 2010/01/24 オナガザル科霊長類は、熱帯から温帯まで多様な環境に分布している。現生のオナガザル科霊長類についての野生種を対象とした社会生態学的研究は、アジア・アフリカ熱帯地域でいずれも1950年代後半から開始され、彼らの採食戦略や対捕食者戦略、さらには混群形成をはじめとする適応様式に関する多くの知見が得られてきた。申請者はこれまでニホンザルを中心に、温帯地域のオナガザル科霊長類の採食生態および社会性についての研究を進めてきたが、その過程でオナガザル科霊長類の旧世界地域全域への分布拡大を可能にした要因に強い関心を抱くようになった。そこで本研究では、多くのオナガザル類が生息するアフリカの森林において温帯地域と同様の調査を行い、食物環境の地域間の違いがオナガザル類の採食生態や社会構造に及ぼす影響の解明を目的とした。 雨季に当たる2009年11月から12月にかけてブルーモンキー (Cercopithecus mitis) とロエストモンキー(Cercopithecus lhoesti)各1群を対象に終日行動観察を実施し、1) 採食品目、2) アクティビティ、3) 二次元的・三次元的な土地利用の各項目を記録した。 調査期間中の行動圏サイズはブルーモンキーが20.0ha、ロエストモンキーが31.5haだった。ブルーモンキーが28種34品目と多様な植物を食物として利用したのに対して、ロエストモンキーの植物利用は14種15品目と少なく、昆虫類の採食割合が極めて高かった。ブルーモンキーの樹上性が高かったのに対し(主要な利用高度10-15m)、ロエストモンキーは地上性がきわめて強かった(主要な利用高度0-5m)。 2010年1月にはブルーモンキーの行動圏内の植生調査を行った。行動観察を行った群れの行動圏(20.0ha)を50m×50mのグリッドに区切り、それぞれのグリッド内のすべての高木の位置をGPSで記録するとともに樹間のサイズを評価した。全体で約5000本、39種の高木が記録されたが、優先樹種はFuutumia africana (本数割合は32%),
Celtis durandii (9.8%), Musanga leo (9.8%), Strombosia schefferi (7.5%),
Carapa procera (6.6%)の5種に限られていた。
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