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事業報告事業番号:20-053 中国商代殷墟遺跡の人骨資料における傷痕の古病理学的調査 報告者:大藪 由美子 期間:2008/07/08 - 2008/08/03 殷墟遺跡は、商代(14B.C.-11B.C.)に比定される中国の初期王朝遺跡である。これまでに多くの人骨が出土し、有力者などの大型墓からは頭蓋骨や四肢の一部を切り離された人骨など骨損傷のあるものが大量に確認されている。これら人骨は、周辺民族との闘争により捕えた捕虜や奴隷が犠牲となったものと考えられており、初期王朝における人間の闘争行為や残虐性などについて貴重な情報を提供してくれる。殷墟遺跡での発掘調査は現在も中国社会科学院考古研究所の安陽工作隊によって行われており、出土資料は安陽工作站で保管されている。そこで、殷墟遺跡出土の古人骨に見られる骨損傷を古病理学的な観点から調査し、古代中国における人間の闘争行為や殺人行為を明らかにするため、安陽工作站に赴き調査することを必要とした。 中国北京市にある中国社会科学院考古研究所にて、今回の調査の趣旨ならびに詳細な内容について対応研究者と打ち合わせを行い、河南省安陽市にある安陽工作站に赴き、殷墟遺跡の商代人骨の観察を行った。今回観察できた人骨資料は、殷墟の新安庄遺跡と黒河路遺跡から出土した商代の人骨資料である。新安庄遺跡の人骨には、個々の墓に埋葬された資料と犠牲坑から出土した資料が含まれていた。黒河路遺跡の人骨は、墓に埋葬された人々のものである。これら人骨資料について、生前における傷痕を確認すべく古病理学的な調査を行った。調査できた資料は、新安庄遺跡から62個体分、黒河路遺跡から37個体分の人骨である。新安庄遺跡と黒河路遺跡いずれの人骨資料からも、生前に負ったと思われる傷痕を数点確認でき、これら傷痕について肉眼観察、サイズ計測、写真撮影、型取を行った。また調査した人骨資料の出土状況や埋葬方法など考古学的な研究内容について、工作站の研究者から詳細な情報を得ることができた。
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