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事業報告

事業番号:20-046

動物福祉に基づく飼育下霊長類のマネージメントおよび研究支援に関する調査

報告者:鈴木 樹理

期間:2009/02/01 - 2009/02/15

申請者の所属する人類進化モデル研究センター(以下センターと略)は、本研究所の全ての類人猿・サル類の飼育管理をしている。自家繁殖体制を確立しRRSが完成したが、動物福祉に配慮した飼育健康管理についてはやっと緒についた段階である。また放飼コロニーの維持や研究者へのサービスについても、まだまだ不十分な段階である。これらのセンターが負うべき本来の役割を速やかに行なっていけるように人的、物的資源及びシステムのレベルアップが急務であると認識している。そのために飼育下霊長類のマネージメント、研究サービス、更には独自の獣医学的研究でも先進施設であるアメリカのNational Primate Research Center(以下NPRC)の現状を視察し、その利点・欠点についての検証が必要であった。

それぞれの施設でこちらからリクエスト(1.獣医学的管理の実際2.コロニーマネージメント(日常の飼育業務および設備管理、従事する職員の教育管理)3.動物福祉のための環境エンリッチメントプログラム)を出して、それに沿った形でサル飼育管理現場の見学及びそれぞれの担当責任者とのディスカッションを行った。

4ヶ所のNPRCは共通点と独自、独特の点があり興味深かった。共通点で最も大事なものは、SPF動物コロニーを創出しそれを維持発展させていることと、環境エンリッチメントに積極的に取り組んでいることであった。NPRCによって飼育している動物種がいくつかは異なっているが、アカゲザルはどの施設でも主たる動物であったので、この種のSPF化が最も大事な課題である。Bウイルスを始めとする数種類のウイルスが存在しないコロニーを基本として、スーパーSPFと呼ばれている更なるウイルス感染を取り除いたコロニーの創出にも成功している施設もあり、今後本研究所でのSPF化を進めるにあたってそのモデルとなるものであった。

マカクの環境エンリッチメントでは、様々な方法及び組み合わせでのペア飼育を行い更に改良する試みが実践されており、本研究所にとっても必要であると痛感した。具体的な方法についても手引き書およびディスカッションによってその一端を学ぶことが出来た。


Wisconsin National Primate Research Center玄関の
展示用コモンマーモセットケージ(外側から見たところ)
ウェブカメラで一般の人々でもリアルタイムでこのマーモセット家族の様子を観察出来る。
ケージの中は様々な環境エンリッチメントの工夫がされている。


Wisconsin National Primate Research Center玄関の
展示用コモンマーモセットケージ(内側から見たところ)

 




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