チンパンジーにおけるあくびの伝染
英国王立協会報(生物学)、7月21日号

 

ジェイムズ・アンダーソン(英国、スターリング大学)
明和(山越)政子(滋賀県立大学講師)
松沢哲郎(京都大学霊長類研究所・教授)

Contagious yawning in chimpanzees
by J. Anderson, M. Myowa-Yamakoshi, and T. Matsuzawa
in Proc. R. Soc. Lond. B (Suppl)
DOI: 10.1098/rsbl.2004.0224

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要約:おとなの女性のチンパンジー6人を被験者にして、あくびの伝染にかんする実験をおこなった。チンパンジーがあくびをしているシーンを撮影したビデオを見せた。対象条件として、チンパンジーがあくびをしていないがただ口をあけているシーンのビデオを見せた。

6人中2人のチンパンジーで、はっきりと、あくびのビデオを見るとあくびが増える、という結果を得た。あくびのビデオを見てあくびが減ったというような逆のケースは皆無だった。6人中3人は子持ちなのだが、その子どもたち(いずれも3歳)は、だれもあくびをしなかった。

これらの結果は、これまで人間を対象にした研究でわかっている従来の知見とよく合致する。すなわち、あくびをしているビデオのシーンを繰り返し見せられると、人間のおとなで42−55%の人はあくびをする。また4歳以下の人間の子どもではこの「あくびの伝染」という現象は見られない。

イヌでもネコでもライオンでも、あくびをする動物はたくさんいるが、これまで知られている限り「あくびの伝染」が知られていたのは人間だけだった。

あくびが伝染するのは、ある種の「共感」ないし「共感する能力」というものを前提としている。他者の行動をもとに、その他者の状態を理解する能力である。そのためには自他の区別も当然必要だろう。

「伝染」という表現から、どうしても自動的に機械的に移るもののように理解しがちだが、じつは「あくびの伝染」という現象は深い知性を必要としていることが、「4歳以下の人間の子どもでは見られない」「人間以外の動物では知られていない」ということから推測できる。

本研究から、チンパンジーにも「あくびの伝染」が認められることが初めて実証された。これは、チンパンジーのような類人猿もまた人間と同様に共感や自己認識の能力をもっていることを示唆する、新たな証拠だといえるだろう。


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video2 mpeg(3.1MB) windows media(1.1MB)

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