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事業報告

事業番号:25-011

霊長類捕食者としての中大型食肉目の行動生態学的研究

報告者: 仲澤 伸子

期間: 2013/6/8 - 2013/9/8

 霊長類の社会や行動の進化を考える上で、捕食圧が大きな要因の1つとなっていることはこれまでに数多く指摘されている。とくに初期人類の進化過程では、比較的大型の食肉目による捕食圧が重要な選択圧となった可能性が大きい。Boesh(2009)は西アフリカ・タイ国立公園での例を元に、ヒョウによる捕食圧がチンパンジーの社会構造に与える影響について議論しているが、その中では東アフリカ各地のチンパンジーがほとんど捕食圧にさらされていないと想定しているなど、その問題点も指摘されている。東アフリカのチンパンジーもヒョウと同所的に生息しており、少なくとも潜在的捕食圧はあるものと考えられるが、これまでそれが定量的な形で示された事はなかった。昨年、申請者がマハレ山塊国立公園において行った調査で得られた糞サンプルの1つからはヒガシチンパンジーの膝蓋骨と指骨が見つかった(Nakazawa et al., 2013)。ヒョウがそのチンパンジーを捕食したのか、死肉を食べただけなのかは不明であるが、ヒガシチンパンジーもヒョウによる捕食圧を受けている可能性が示唆された。このことから、食肉目が類人猿をはじめとする霊長類の潜在的捕食者となっているという視点からチンパンジーを取り巻く環境を見つめ、初期人類の生活や古環境の復元を目指した。そのため、本研究では、チンパンジーの長期研究が継続されており、詳細な情報が蓄積されているタンザニアのウガラとマハレにおいて、これまで全く詳細な研究が行われてこなかった中大型食肉目を対象に、その生態及び行動の特性を明らかにすることを目的とした。

  ウガラ地域において糞センサスをおこない、糞の収集および糞と足跡の位置をGPSで記録した。痕跡の収集対象はヒョウ、サーバルキャット、ライオン、リカオン、ハイエナとした。ハイエナを除く4種は獲物をよく咀嚼せずに飲み込むため、糞の中からは大量の骨、毛、外皮膚等が見つかる。この内容物からその食性を調べた。収集した糞は乾燥重量を測定した。日本に持ち帰った糞のサンプルは、今後、その内容物の同定を進めていくとともに、種同定も並行して行う予定である。また、トランセクト上にカメラトラップ10台をセットし、個体識別を試みた。マハレ山塊国立公園においても同様の調査を行った。これらのデータは、今後より詳細に分析していく予定である。







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