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事業報告

事業番号:24-009

ボルネオ島サバ州におけるカワウソ類の基礎的生態と臭いを用いたコミュニケーションに関する研究

報告者: 小林 俊介

期間: 2012/7/7 - 2012/11/2

 現在ボルネオ島には3種のカワウソ類(コツメカワウソ、ビロードカワウソ、スマトラカワウソ)が生息しているとされる。今までこれらの動物に関する野外研究はほとんど知られておらず、特にボルネオ島ではこれまで研究例が知られていない。一方で、河川生態系を代表するフラグシップ種として、またアンブレラ種として彼らの生態・行動を明らかにすることはアジア圏の河川生態系の保全にとって非常に重要な意味を持つ。

 本研究では、カビリ・セピロク保存林でカワウソ類について基礎的な生態を調べるとともに、ビデオトラップを用いてフン場での行動を記録し彼らの臭いを用いたコミュニケーションに迫ることを目的とした。それらの生態情報を得ることを通して、種や生態系の保全への寄与を果たすために本研究を必要とした次第である。また、昨年度の調査を通してカビリ・セピロク保存林にはコツメカワウソとビロードカワウソの2種が同所的に生息していることもわかっており、研究適地であると判断した。

 まず、カワウソの糞場の探索を行い、その構造などに関する情報を記録した。

次にカワウソ類の糞場での行動を記録するためにカメラトラップを用いた映像記録に挑んだ。本年度は100を超えるビデオ(1本につき1分のビデオ)を記録することに成功し、またビロードカワウソがコツメカワウソの糞場を利用する様子などの貴重な記録をすることにも成功した。さらに、全くの別種(食虫目ジヌムラ)がカワウソの糞を採食する様子や、マレーシベット(食肉目ジャコウネコ科)が糞に体をこすりつける行動なども記録された。

 また、糞場周辺に待機してカワウソが訪れるのを待ち、直接観察にも挑戦した。結果としては、数例のみの遭遇であったが、多くの情報と印象を裏付ける行動を観察することが出来た。

 捕獲にも挑戦したが、結果は1頭も捕まえることが出来ず、芳しくない結果に終わってしまった。そもそもカワウソ類の捕獲は非常に難しいことが知られている。


糞場でデータ採集


アシスタントと調査中の写真


カメラトラップの管理

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