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事業報告

事業番号:23-005

ドール(Cuon alpinus)のコミュニケーション、特に音声行動の機能の解明

報告者: 澤栗 秀太

期間: 2011/8/18 - 2011/12/21

派遣研究者は、平成22年度から国内外の動物園および南インドの野外調査地でドール(Cuon alpinus)の行動研究を行っている。ドールは、群れで狩りをするイヌ科の1種であり、インド、東南アジア一帯、中国などに棲息する。ドールは飼育下および野生下の様々な状況において色々な音声を発することが報告されており、何らかの音声コミュニケーションを行っていると考えられるが、その機能は十分には明らかにされていない。したがって、飼育・棲息環境、性・年齢構成が異なる群れの行動を観察し、その行動と音声の関係を分析することにより、各音声の機能を明らかにしたい。現在日本で3頭以上の飼育を行っているのはズーラシアのみであり、上記目的のためにはドールの行動および音声の記録を海外の動物園や野外調査地で行う必要があり、インドのアリグナル・アンナ動物園(AAZP,タミルナドゥ州チェンナイ,8月末〜9月初め)とムドゥマライ国立公園(MTR,タミルナドゥ州ニルギリ,9月半ば〜12月半ば)にて調査を行った。

AAZPでは、3頭のメスから成る群れと1組のペアを対象に調査を行った。昨年と異なり、前者放飼場の周囲を観光客が自由に行き来可能で、人による影響が大きく、観察には向かなくなっていた。MTRでは、インド科学大学院生態学センターの調査小屋を拠点に、ドールの目撃情報を元に、トラッカーの同行で主に徒歩で調査を行った。野外での総調査時間は計81日間で426時間19分、そのうちドールとの遭遇回数は20回で、合計観察時間は2時間7分であった。野外調査期間中には4種類の音声(yap, squeak, yap-squeak, whistle)を確認した。今後の調査では、観察効率を上げるためには、調査地内の数か所での自動撮影装置の設置や一部個体への発信機の装着など、他の調査方法も採る必要がある。現在、以上で得たデータを元に、行動項目を100あまり、音声を13種に分類し、高頻度で発せられた数種の音声については機能の仮説を立てた。今後これらをまとめ修士論文とする。


こちらを警戒しながら移動するドール


道路上に首の右側面をこすりつけるドールの単独個体


シグル保護区でみつけたドールの巣の場所

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