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事業報告事業番号:23-001 食物分配を中心とした野生ボノボの行動調査 報告者: 山本 真也 期間: 2011/6/14 - 2011/8/22 申請者は、ボノボとチンパンジーでの比較認知科学を主な研究課題としている。野生ボノボを対象とする本調査は、「ボノボとチンパンジー」×「野生と飼育下」という世界でも類をみない2×2研究パラダイムの一翼をになう。 2010年7-8月にも、同じワンバ村にて野生ボノボの行動調査をおこなった。このときの調査から、7-8月という時期が現地名「ボリンゴ」という大きな果実の実る季節であり、1か月半で100事例以上という非常に高頻度で食物分配が観察できることがわかった。本調査では、食物分配の詳細な行動記録に焦点をあて、論文にまとめるに十分かつ詳細なデータを収集することを主目的とする。 食物分配は、申請者が主テーマとしてきた「利他・協力行動の進化」を明らかにする上でカギとなる行動である。チンパンジーとボノボを比較し、さらには野生での観察と飼育下での詳細な実験研究を組み合わせることにより、利他・協力行動の進化について、新しい知見が得られるものと期待できる。その際、チンパンジーに比べ比較的情報の少ない野生ボノボでの詳細なデータは非常に有用であり、今後の研究の発展・展開にも大きく寄与すると考えられる。 ヒト科3種での比較研究をおこなうため、今年1-2月のギニア共和国ボッソウ村での野生チンパンジー調査につづき、本プログラムではコンゴ民主共和国ワンバ村にて野生ボノボの調査をおこなった。ビデオを用いた記録を中心に、食物分配・集団協力行動・母子関係・群間関係・採食テクニックなどのデータを収集した。食物分配にかんしては、昨年度とあわせて計200事例以上を収集した。集団協力行動にかんしては、ボッソウのチンパンジーもワンバのボノボも村道を横切って2つの森を行き来することが知られている。この道渡りのときの集団構成・渡りの順番・警戒行動・見張り行動などを記録した。これらのデータを分析し、チンパンジーとボノボの異同を主眼に論文にまとめることを予定している。また、コンゴ民主共和国ではローラ・ヤ・ボノボサンクチュアリーを、ベルギー王国ではプランケンダール動物園を訪問し、近い将来ボノボを日本に導入するための研究・飼育にかんする情報収集をおこなった。
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