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事業報告

事業番号:22-010

野生チンパンジーと飼育チンパンジーの行動の比較:環境が行動にもたらす影響

報告者:中島 麻衣

期間:2010/06/05 - 2010/12/16

野生下のチンパンジーは、高度に社会的な生活を営み、複雑な自然環境を利用している。一方飼育下では、物理的環境や社会的環境が制限されることで、チンパンジーが本来の行動を発現できない場合がある。近年、そういった飼育環境を改善するために、環境エンリッチメントが大きな関心を呼んでいる。しかし、これまでのエンリッチメントの研究は、飼育下の部分的な環境操作による短期的な効果を評価するものであり、環境と行動との相互作用という観点での野生下との量的比較はほとんどおこなわれていない。本研究では、野生と飼育下のチンパンジーの行動を直接観察によって比較し、環境が行動にもたらす影響を明らかにし、環境エンリッチメントや保全活動に対する新たな知見を得ることを目的とする。今回は、人馴れした野生のチンパンジーが棲息するタンザニアのマハレ山塊国立公園において、チンパンジーが利用する物理的環境の指標として、彼らがさまざまな活動に応じて実際に利用した高さおよび移動距離に注目して調査をおこなった。

マハレ山塊国立公園で個体識別されているMグループのチンパンジーを対象に、個体追跡による行動観察をおこなった。アカンボウ、コドモ、ワカモノ、オトナの各性年齢クラスから2〜3個体ずつを対象として終日個体追跡をおこなった。1分間隔のスキャンサンプリングで追跡個体の活動(採食・休息・移動・社会行動)とそれに関わった他個体の情報、その際に利用した高さを記録した。また、観察中にはGPSを携帯し、移動軌跡と移動距離を同時に記録した。その結果、野生のチンパンジーは採食時には高い場所を利用することが多いが、移動時には地上を利用する割合が高いことが明らかになった。また、メスのほうがオスよりも高い場所を長く利用する傾向があることも示唆された。今後さらに分析を進めていくとともに、飼育下のチンパンジーで比較可能なデータを収集する予定である。


Chimpanzees eating leaves on tree.


Chimpanzees resting on the ground.

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