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事業報告

事業番号:22-009

カタビ国立公園におけるキリンの社会行動、社会構造に関する研究

報告者:齋藤 美保

期間:2010/06/06 - 2010/11/05

キリンは日本の多くの動物園で見られる種であり、ほとんどの園は1個体またはペアでキリンを飼育している。 一方、野生下のキリンについては群れのサイズが最大で30頭を超える場合も先行研究から明らかにされており、野生下でのキリンの社会行動や個体間交渉は、飼育下に比べて大きく異なるのではないかと予想される。そのため、動物園では調査が困難な、自然状態におけるキリンの群れの構造、行動パターン、社会交渉等について探るには野生下においての観察が不可欠である。群れの構造および社会的交渉を調査することは、キリンの社会生態学的知見を深めるだけでなく、今後の保護活動を推進する上でも重要である。そこで今回、タンザニアのカタビ国立公園においてキリンの基礎的情報の収集、および乳離れをしていない子供を含む群れ内での社会的交渉に着目して調査を行った。

申請者は、2010年6月から10月までタンザニアのカタビ国立公園に生息するマサイキリンを対象に調査を行った。
はじめに、個体ごとに異なるキリンの身体の模様に注目し、それを指標として個体識別を行った。さらに、群れの性比、頭数、を記録し、個体を体長から生体、亜成体、幼体の3クラスにそれぞれ分類した。そののち、行動を13種類のカテゴリーに分類し、個体追跡によって1分間隔のスキャン・サンプリング、および追跡個体と他個体間の社会的交渉、近接距離等について連続観察を行った。また、GPSを用いキリンの観察地点の記録を行った。その結果、一般にキリンの群れは離合集散型と言われているが(coe,1967; Dagg&Foster,1976; Estes,1991; Kingdon,1997)、同世代の子供を持つ母親同士が集まって恒常的な群れを形成する傾向がみられ、さらに亜成体から乳離れをしていない個体に対する社会的交渉が多くみられた。今後、さらに詳細な分析を進めていく予定である。


A juvenile giraffe at the Katavi National Park.


Herd of giraffes.

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