本院では2004年にシングルスライスCT、2005年に4列CTが導入されて以降、年間平均でのべ600-700症例のCT検査を実施しており、通常の単純CT撮影だけでなく、多時相造影CT、脊髄造影CT、CTガイド下生検も行っている。
昨年度を例に、当院のCTの使用状況(対象動物、撮影部位、疾患など)、さらに具体的な症例提示とともにCT検査の実際の流れをお示しする。
本院では2004年にシングルスライスCT、2005年に4列CTが導入されて以降、年間平均でのべ600-700症例のCT検査を実施しており、通常の単純CT撮影だけでなく、多時相造影CT、脊髄造影CT、CTガイド下生検も行っている。
昨年度を例に、当院のCTの使用状況(対象動物、撮影部位、疾患など)、さらに具体的な症例提示とともにCT検査の実際の流れをお示しする。
CTは獣医学領域でも普及し、小動物のCT画像診断に関する情報は蓄積されつつあるが、非ヒト霊長類の情報は少ない。そこで、非ヒト霊長類におけるCT画像診断の経験を蓄積することを目的に研究を開始した。本研究では①安楽殺直前のスクリーニングCT撮像、および②自然発症疾患症例のCT撮像をおこなった。2010年に撮像をおこなった11症例について、それぞれの画像と安楽殺後の病理解剖の肉眼および病理組織所見、症例の予後、治療方針、治療に対する反応等と照合し、検討した。
筋骨格モデルとは、動物の筋骨格系の幾何学的構造とそこに作用する力学を、計算機内に数理モデルとして再現したものである。本講演では、CTを用いた霊長類筋骨格モデルの構築と、その人類的研究への応用について解説する。
骨格系は脊椎動物の身体に作用する力を支える役割を持つ。また、身体に作用する力は骨格系により与えられた姿勢により決まる。骨格系の形態とそれに作用する力は密接に関係しており、その力学状態を明らかにすることは骨格系の機能を理解する上で重要である。CT画像から得られるデータを基に正確な形状と密度分布を反映した骨の力学解析が可能になってきた。本講演では、ヒト脊椎やキツツキ頭骨、キリン頸椎等を対象に、CTを用いて行った力学解析を紹介し、骨の形態と力学的機能の関係について考察する。
生体内では生命活動を維持するために様々な流れがあります。呼吸器系や心臓血管系が代表的な流れになります。逆に流れが疾病の原因と考えられる場合もあります。このような分野を Bio-fluid Dynamics といい、生体内の力学を解析する分野であるBiomechanics の1分野を構成しております。本講演では、Bio-fluid Dynamics のご紹介をし、私たちの研究室で取り組んでいる血管系(左図)、鼻腔内流れ(右図)および心臓の連成解析の数値シミュレーションの結果をご紹介します。
左、大動脈に発症した瘤内の流れと壁ずり応力分布; 右、冷たい空気を吸った際の鼻腔内温度分布と流れ
鼻から吸った空気は、鼻腔内で温度と湿度が調節され、適当な状態で肺に届けられる。ニホンザルは、暖温帯から冷温帯にかけての広い気候区分に分布する。したがって、鼻腔は気候環境に応じて形態変異を示すと考えられる。つまり、寒冷地の個体ほど、吸った空気を効率よく暖めるのに適した鼻腔の形をもつと予想される。そこで我々は、日本各地のニホンザルの頭骨をCT撮像し、鼻腔形態の地理的変異を調べた。本研究会では、その結果について発表する。
一部の哺乳類及び鳥類における脳エンドキャストの体積と最大幅との間には、非常に高い相関が見られる事がこれまでの講演者らの研究によってわかってきた。本研究ではCT画像から3Dエンドキャストを作製し、上記エンドキャストの体積と幅の関係が霊長類全般においても成り立つかどうか精査し、さらに化石種においても適応可能か検討した。その結果、ヒトを含む霊長類においても同様の相関が見られた。さらに、霊長類における脳エンドキャストの幅に対する体積の回帰直線と、他の哺乳類より得られた回帰直線との間には有意差が認められなかった。
旧世界ザルの下顎骨外側面には骨隆起がみられる場合がある。ニホンザル、アカゲザル、カニクイザル、タイワンザル、サバンナモンキーの下顎骨を調査したところ、骨隆起は第三大臼歯萌出後の10~20%の個体にみられた。骨隆起は触診によってのみ確認できるものから、肉眼的に明らかに認められ、非常に大きいものまで様々な発達程度を示した。CT画像から隆起部は緻密骨で構成されていることが分かった。このため、骨隆起は腫瘍のような病変ではなく生理的な骨の膨隆と考えられた。
ニホンザル下顎骨の外側面にみられた骨隆起(矢印)、 上段:Volume Rendering画像(a 正貌,b 側貌)、 下段:CT画像(c 前頭断,d 水平断)
鶴見大学では平成17年より新ハイテクリサーチセンターにおいて,「ひとりひとりの顎と体にやさしい歯の補綴と噛み合わせ」と題して医用工学技術を応用した歯科臨床への応用を行ってきた.中でも,歯の経年的変化,特に,加齢による歯の形態変化は顎顔面部の重要な機能である咀嚼と密接に関係しており興味深い研究課題となっている.平成20年より共同でチンパンジーの口腔内検査を開始し,歯の形態について検討を加えてきた.これら結果の総括とCT画像データを元にしたチンパンジーの高精度3次元再構築画像の紹介と画像研究の方向性をご紹介する.
海綿骨の骨梁構造についての研究は、骨の微細構造を撮像できるmicroCTスキャナーなどの普及に伴い、この10年ほどで飛躍的に増えた。これまで外部形態のみでは説明できなかった骨の力学的適応の解明や化石種の運動復元等への応用が期待されている。本発表では、小型~中型の霊長類の幾つかの四肢骨関節部での撮像データを用いて、骨梁構造と力学的適応との相関が種間変異レベルにおいてどのように観察されるかを紹介する。また、形質人類学分野での骨梁構造研究の動向と、micro CT撮像や骨梁構造解析における課題について紹介する予定である。
小型~中型霊長類の関節部の内部。上段は上腕骨遠位部横断面,下段は大腿骨近位部横断面。左からPerodicticus potto(ポト),Cebus apella(フサオオマキザル),Erythrocebus patas(パタスモンキー),Hylobates lar(シロテテナガザル)。Scale Bar = 5mm。
地球上で唯一の直立二足歩行をする人間の椎骨は常に多大な重力の影響を受けている。その結果、ヒト椎骨の構造力学的障害、骨折、腰痛などを生じやすい。では、四足・二足歩行するニホンザルのような霊長類の場合はどうなっているか。骨量および骨質を非侵襲的に評価できるマイクロCT装置を利用して、ニホンザルとヒトの椎骨の三次元構造特徴を、年齢と性別を考慮して比較検討する。
ニホンザル(a, b, c) とヒト(d, e, f) 椎骨の画像
近年、CT・三次元再構築手法を用いた研究は、今まで見ることのできなかった構造を明らかにし、研究手法に大きな技術革新をもたらしている。CTを用いることで、対象を非破壊で観察することができ、その有用性は無限のものであると考えられる。CTはX線を使用しているということから、その表面にX線に感光するものを塗布して用いれば、特定の部位(特に筋の付着部位)を抽出することも可能である。骨は筋の力学的な作用によって影響を受け、骨が変化する一つの大きな要因であると考えられている。今回、骨の筋付着部に関する骨情報を如何に引き出し、それがどのような研究に生かせることができるのか、また将来的にはどのような方面に応用できるのか、報告する。
オナガザル科霊長類の耳介形状の変異をGeometric morphometrics techniqueを用いて定量化した。研究ではオナガザル霊長類液浸標本を医療用CTスキャナで撮影し、GM法を用いて形状変異傾向を算出した。結果、オナガザル科霊長類の耳介形状変異の抽出に成功した。変異は音源定位能力に関わっていることが分かっている共鳴腔の数とサイズと配置の違いが反映していた。今後、音源定位能力の違いを解明するために耳介で実際にどのような共鳴が起こっているのかに注目していく予定である。
オナガザル科霊長類の耳介形状モデル。左より、ショウハナジログエノン、ハヌマンラングール、ニホンザル