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事業報告事業番号:25-010 ドール(Cuon alpinus)のコミュニケーションに関する研究 報告者: 澤栗 秀太 期間: 2013/06/27 - 2014/02/03 派遣研究者は、2010年から国内外の動物園および南インドの野外調査地でドール(Cuon alpinus)の行動研究を行っている。ドールはイヌ科の1種で、インド、東南アジア一帯、ロシアなどに棲息する絶滅危惧種である。群れを形成し、共同で育児や狩りをすることが知られている。視界の悪い森林に棲息するため、主に音声やにおいによるコミュニケーションを行っていると考えられているが、その実体は明らかでない。修士課程の研究として、彼らの音声コミュニケーションの解明を目的に、国内外の動物園4園とインドの野外調査地で調査を行った。この研究で、ドールの行動目録(134種)と音声レパートリー(13種)を明らかにした。また、ホイッスル音などの、発声頻度の高い音声について、発声個体の行動や発せられた状況、および他個体の反応から、その機能に関する仮説を提示した。そこで、本調査では、さらに調査と分析を進め、他の音声の機能に関しても有望な仮説を構築する。また、飼育下でも野外でもこれまで充分な記録ができなかった、繁殖期や採食時の音声と行動の調査を行う。以上を目的として、6月27日から2月3日までインドに渡航し、ムドゥマライ国立公園で調査を行った。 これまで継続的に観察を行ってきた2つの群れを追跡し、ひとつの群れのすべての個体を識別した上で、行動と音声の連続記録を行った。1月8日には巣を発見し、14日間にわたり育児行動を観察した。この間、日中はすべての個体が巣の半径200メートル以内にとどまることが多かった。早朝や夕暮れ前には、すべての個体、あるいは母親個体以外の全個体が、狩りに出るために仔を巣に残して離れた。仔の音声を3種類確認した。1月22日には巣を変える行動を確認した。巣の変更、仔の運搬行動において、少なくとも成体の役割を4種類確認した。これらの調査と同時に、糞の位置、個数、新鮮さなどを記録した。今後は収集したデータをすみやかに分析する。
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