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事業報告事業番号:24-006 「緑の回廊」プロジェクトの植林地域におけるチンパンジーの生息地利用調査 報告者: 森村 成樹 期間: 2012/4/9 - 2012/6/15 ギニア共和国・ボッソウ村では、かつて森だった地域がサバンナとなり、野生チンパンジーが約6Km2の森にほぼ孤立した状態で生息している。この地域では緑の回廊プロジェクトとして、植林により森林を再生してチンパンジーなど野生動物の生息地間を結ぶ事業が推進されている。そこで本研究では、チンパンジーの生息地域および植林地域で野生動物、特にチンパンジーの活動を調べた。個体追跡調査によりチンパンジーの行動を観察し、GPSを用いて遊動域を明らかにした。同時に温度・湿度を観測し、チンパンジーが利用する場所と植林地内とで気象条件を比較した。緑の回廊プロジェクトの植林地では、植林による森林の再生が動物に及ぼす影響について検討した。 GPSを利用した野生チンパンジーの個体追跡調査をおこなった。調査期間中の総踏査距離は249km(361時間)だった。チンパンジーの利用地域および緑の回廊プロジェクト地域の1636地点で温湿度データを観測した(図)。その結果、チンパンジーは遊動域内の微気候を上手く利用していることが分かった。午前中の気温が上昇する時間帯は、直射日光が当たる場所を利用した。逆に、午後になり気温が高くなる時間帯は日陰のある地域を主に使用した。午後は休息するためのネストを作る必要性から、主に森林で過ごした。こうした観点から植林地の気象条件を見ると、気温が低いときにチンパンジーが暖を取る場所として優れていることが分かった。その反面、日中は極めて高温、乾燥した場所になるため、日よけが必要になる。緑の回廊プロジェクトで進めている東屋を併設する植林方法は、チンパンジーがサバンナの厳しい環境でも快適に過ごす森林パッチの形成に役立つ。過去4ヶ月で目撃は1例のみと使用頻度は低かった。しかし、植林地域に隣接する森林の利用は活発で、植林地にはチンパンジーが食べる果実のなる樹木の苗が植えられている。植林地を拡大することで食・住的環境が整い、アンブレラ種であるチンパンジーの利用は十分期待できるものだった。
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