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事業報告

事業番号:24-004

捕食者の鳴音を用いた鰭脚類へのプレイバック実験、および音響解析手法の習得

報告者: 水口 大輔

期間: 2012/6/8 - 2012/9/26

近年、鰭脚類による漁業被害が深刻な問題となっており、様々な対処法が検討されている。音を用いて鰭脚類を漁網から追い払う試みもその一つであるが、いまだ十分な成果が得られているとは言い難い。この理由として、音を繰り返し聴かせることによる反応の減少が挙げられる。ここで、鰭脚類の捕食者が発する音声に対しては、生得的な忌避反応を示す可能性があり、この場合は繰り返しによる反応の現状が抑えられる可能性がある。本研究では、カリフォルニアアシカ・トド・ゼニガタアザラシの3種に対して、シャチが鰭脚類を捕食する際に発していたコミュニケーション音声を再生し、音声に対する鰭脚類の応答、および再生の繰り返しによる反応の変化を観察する。派遣先の米国海棲哺乳類研究室は、西海岸全域において鰭脚類の個体標識および長期的なモニタリングを行っており、個体を特定した上で継続的に行動が観察できるため、プレイバック実験による反応の観察に最適な環境であった。

今回の渡航では、プレイバック実験に先立つ予備的な調査として、ワシントン州シアトルのタトゥーシュ島、デルタ島、オレゴン州のアストレアにおいて、鰭脚類3種(トド・カリフォルニアアシカ・ゼニガタアザラシ)の行動観察と水中音の録音を行った。録音された音声を用いて、水中の雑音レベルの測定・評価と鰭脚類の音声レパートリーの分類を行った。トドとカリフォルニアアシカについては、水中・空気中ともに継続的かつ頻繁な発声が見られたため、これらの音声がプレイバックによる反応を観察する指標として利用可能であることが示唆された。また昨年度に引き続き、最新の音響解析手法のトレーニングを受けつつ、ベーリング海における長期録音データを利用したクラカケアザラシの音声解析を行った。ベーリング海陸棚辺縁部の4か所の水中マイク係留地いずれにおいても、クラカケアザラシの発声頻度は繁殖期に最も高くなっており、頻度変化には海氷状態などの外的要因が関係することが示唆された。また、いずれの係留地でも共通な発声の日周性が見られた。


シアトル、タトゥーシュ島にて。


オレゴン州アストリアの港にて。左に標識個体

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