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事業報告事業番号:21-013 疎開林に棲息する野生動物の行動と生態に関する研究 報告者:飯田 恵理子 期間:2009/08/26 - 2009/12/21 近年、初期人類進化の舞台が完全にオープンなサバンナではなく、疎開林的な環境であったことが指摘されている。こうした観点から、タンザニアの疎開林でチンパンジーの研究がおこなわれているが、進化を考える上では単一の種だけではなく、同所的に棲んでいる他の哺乳動物の行動や生態を知ることが不可欠である。そこで本研究では、チンパンジーが棲息するタンザニアの疎開林(マハレ地域)において、哺乳動物相の基礎的なデータを収集するとともに、とくにキボシイワハイラックス(Heterohyrax
brucei)の生態について明らかにすることを目的とした。ハイラックスは、原始的な哺乳類の特徴を保持しているが、より特殊化したウシ科が草食動物のニッチを広く占めている現在のアフリカにおいても、繁栄を続けている。形態的にさしたる特殊化をしないままで、ハイラックスがどのように現在の疎開林に適応しているのかは、中新世の疎開林における生態系を推定する上でも、哺乳動物の進化を考える上でも重要である。そこで、キボシイワハイラックスについては、コロニーが形成される岩場での観察と糞センサスにより基礎的情報を集めた。また、他の動物相の把握については、糞センサスによる種の同定と行動範囲の推定をおこなった。 哺乳動物相の全体的把握のために、週に1度の糞センサスをおこない、トランセクト上の哺乳動物の糞の位置を記録した。この際、形状で大まかに動物種を推定した。さらに、DNAサンプル用に糞の表面を綿棒で採取し、緩衝液に保存し持ち帰った。霊長類の糞や毛からは、DNAを抽出する方法が確立されているため、今後この方法を応用してDNAを抽出する。センサスの際には、可能な限り動物の直接観察、足跡のフィールドサイン観察、鳴き声による観察もおこなった。糞によるセンサスにより、昼行性動物だけでなく夜行性の哺乳動物の行動範囲も知ることができた。キボシイワハイラックスの調査は、コロニーのある岩場において観察をおこなった。彼らは決まった岩場で生活しているため、タンガニーカ湖岸沿い約2 kmに点在する岩場おいて、全ての巣穴・ため糞の場所とその特徴についての調査をおこなった。また、日々の糞センサスで移動状況や密度の推定を行い、DNAサンプルも採取した。今後はマイクロサテライト内に個体識別マーカーを作成し、個体の遊動範囲の推定や、遊動の季節変化などを明らかにする。
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