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事業報告事業番号:21-012 オオカミの生態や生息地を調査し、遺伝子解析試料やデータを収集する。 報告者:岸 尚代 期間:2009/10/04 - 2009/12/06 派遣研究者はイヌおよび日本の動物園で飼育されているオオカミについて、行動や性格と関連する遺伝子の多型について調査してきた。しかし、日本のオオカミは絶滅しており、生態や生息地について深い知識を得ることができない。イタリアでは現在も約600個体が野生下で生息している。国立環境保全研究所では、イタリア広域で定期的な糞の採取やカメラトラップによる個体数調査など、保護地域と連携し保全を視野に入れた研究を行っている。また嗅覚器官遺伝子やイヌとの交雑に関するミトコンドリア遺伝子などの研究も進めており、最新の実験機器や解析ソフトなどを意欲的に取り入れている。そこで、同研究所で保有しているサンプルを用いて性格と関連する遺伝子の解析およびオオカミの生息地観察を行った。さらに今後の研究に役立てるため、解析ソフトや機器類についても学んだ。また、Max Planck研究所および Leibniz野生動物研究所では、さまざまな動物を対象とした研究について学び、最新の研究についての意見交換を行うことを目的とした。 イタリア国立環境保全研究所では、国内4地域から採取したヨーロッパオオカミ17個体について、性格と関連がある8遺伝子11領域の解析を行った。7領域でイヌと同様の多型があり、そのうちアンドロゲン受容体遺伝子Q2(ARQ2)ではイヌでは見られない型があるなど、遺伝的な多様性が認められた。また、系統樹作成用のMetaPIGA2.0など解析ソフトや自動核酸抽出装置などの使用法も学んだ。さらに、イタリアの州立公園Parco dei Gessi Bolognesi e Calanchi dell’Abbadessa にてオオカミの生息地を見学した。ドイツのMax Planck研究所では進行中の研究紹介を行い、イヌの行動学研究者や霊長類の遺伝学研究者と意見交流しさまざまな視野での研究活動を学んだ。またLeibniz野生動物研究所では多岐にわたる野生動物の研究について聞き、ドイツの野生オオカミの筋組織サンプル8個体分を頂いて解析した。うち6遺伝子領域でイヌと同様の多型があり、またARQ2でイタリアと同様のオオカミ特異的な型があるなど、遺伝的多様性が認められた。今後、イタリア、ドイツ、日本の動物園飼育個体の間で、地域間比較を行う予定である。
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