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事業報告

事業番号:21-007

霊長類におけるミトコンドリア電子伝達系タンパク質の進化的研究

報告者:松井 淳

期間:2009/10/05 - 2010/02/27

申請者は生物情報学の手法で霊長類・ヒト特異的なミトコンドリア電子伝達系タンパク質の機能的進化に関わるアミノ酸置換を網羅的に解析し、生化学的な研究の足がかりとなりうる精度の高い水準の予測をすることが重要と考えている。これまで、ヒトのミトコンドリアの遺伝子は、人類進化の道筋を解明しようとする研究に多く用いられ、また様々なミトコンドリア疾患研究も進められたことから、現在、ヒトのミトコンドリアDNA全塩基配列はデータベース上に6600以上報告されている。これらデータの蓄積は詳細な解析が行える一方、全てのデータを使った解析は膨大な計算時間を要するために現実的ではない。ヒトミトコンドリアデータの選出、また新たに塩基・アミノ酸配列データから適応進化を検出するための方法を検討しなければならないため、ヒト集団のミトコンドリア研究に多くの実績があり、また人類進化の遺伝学的研究を精力的に行っている研究者の知見が研究を発展させる上で重要と考え、本制度の援助を受けて派遣先の研究機関で研究活動を行った。

霊長類(ヒト、ネアンデルタール人データを含む)、近縁目のデータをあわせた120のミトコンドリアゲノムについて、統計学的手法を用いて電子伝達系タンパク質サブユニットの適応進化を検出する解析を行った。あるサブユニットに統計的に有意な数アミノ酸座位の適応進化による置換が検出され、タンパク質構造とアミノ酸置換の機能的性質を考え合わせると、ATP合成酵素のプロトン輸送に関わっている可能性が示唆された。これらのうちの1つは、霊長類のある系統特異的におこっており、なんらかの系統進化的な機能選択である可能性も考えられる。さらに派遣先の研究者と共にヒト集団についてこのアミノ酸置換座位を解析してみると、ヒトの祖先集団において多様性があり、各地へ拡がったヒト集団の地域特性との関連が示唆された。派遣先研究機関では世界各地の研究者による数多くのセミナーが開かれ、それらに出席することで最新の研究にふれることができた。


ケンブリッジ大学リバーヒューム人類進化研究センター外観


作業スペース

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