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事業報告

事業番号:21-004

野生チンパンジーの活動時間配分と、行動レパートリー

報告者:山梨 裕美

期間:2009/08/17 - 2009/10/28

申請者は霊長類研究所で飼育下のチンパンジーの生活の質を向上させる試み(環境エンリッチメント)をおこなってきた。飼育下チンパンジーの行動の目標となるものが、野生のチンパンジーの行動である。具体的には、野生チンパンジーの行動時間配分に近づけること、野生チンパンジーのような多様な行動を発現させることといえる。これまで野生チンパンジーの研究がおこなわれてきたが、それらは、飼育下チンパンジーの福祉を念頭に置いたものではない。実際に飼育チンパンジーの福祉を評価するためには、直接比較可能なデータが必要となる。霊長類研究所のチンパンジーは13個体(1個体は入院中)の社会的な群れで生活しているのに対し、ボッソウのチンパンジーは13個体である。年齢も5歳から33歳にわたり、類似した社会構成のボッソウの群れは、霊長類研究所のチンパンジーのモデルとするのにふさわしいと考えられる。そのため今回、実際にボッソウを訪れ、なるべく多くのチンパンジーから行動データを収集することを目的とした。またフランスやオランダで、研究成果の発表・情報交換・動物飼育施設見学をすることで、新しい研究の方向性について検討をおこなうことを目的とした。

2009年9月から10月にボッソウ(ギニア)にて、チンパンジーの終日追跡をおこない、チンパンジーの活動時間配分・行動レパートリーのデータを収集した。ボッソウのチンパンジー群に在籍する13個体中、コンソート中のペア・乳児以外の個体10個体からデータを収集することができた。朝は6時半頃に現地ガイドと森に向けて出発し、チンパンジーが就寝する18時半頃まで追跡をおこない、行動を記録した。活動時間配分は1分ごとに行動をノートに記述し、その他の興味深い行動などはビデオカメラ・デジタルカメラにて記録した。滞在中にチンパンジーが鳥を捕らえて持ち運ぶといった珍しい行動をなども観察することができた。野生動物研究センターの森村成樹氏とケンブリッジ大学のスザーナ・カルバーリョ氏と一緒に滞在した。得られたデータは、今後飼育下チンパンジーの環境を評価する指標を設定するために用いる予定である。
2009年8月19日から24日まで、レンヌ大学でおこなわれた、第31回国際動物行動学会に参加し、ポスター発表をおこなった。最新の研究の動向について理解を深めることができ、また多くの研究者と議論することができた。
2009年8月26日から9月1日までオランダに渡航し、動物飼育施設を訪問した。AAPサンクチュアリでは、マイケル・セレス氏(チンパンジー管理コンサルタント)に施設を案内いただいた。社会的なスキルのないチンパンジーなどを群に復帰させる取り組みや環境エンリッチメントをさかんにおこなっている様子を見学し、また飼育の現場に携わっている方々と意見を交換し、交流を深めることができた。




毛繕いをするチンパンジー(ボッソウ・ギニア)


サンクチュアリの屋内施設の様子(AAP・オランダ)

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