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事業報告事業番号:21-002 霊長類における比較ゲノム・比較トランスクリプトーム研究を行なう 報告者:郷 康広 期間:2009/07/29 - 2009/10/02 派遣先であるマックスプランク進化人類学研究所・進化遺伝部門のスバンテ・ペーボ博士の研究室は、霊長類の比較ゲノム・比較トランスクリプトーム研究の世界トップの研究室であり、今までに数多くの人材や優れた論文を輩出してきた。また、今回の派遣で使用する予定であった脳のサンプルをヒトおよびチンパンジーで多数保有しているだけでなく、次世代シーケンサーを使ったサンプル調整などの実験をルーティーンで行なっており、そのためのプロトコルなども多数備えている。そのようなインフラが整った研究室ではあるが、DNAの網羅的メチル化解析(比較メチローム)は未開拓な領域である。そこで、申請者は比較メチル化解析を行なうための実験計画を出し、そのアイデアと研究室の種々のインフラを組み合わせる事で、インパクトの高い研究ができると判断したために、ITP-HOPEによる援助を受けて派遣先での研究を行なった。 ヒトとチンパンジーのDNAメチル化を網羅的に比較解析することで、メチル化のヒトの進化における役割を解明することを目的とした。最終的にはヒト4個体、チンパンジー4個体の前頭前野背側部由来のDNAサンプルを使うことを目的としてが、実験のプロトコルが確立していないステップが数多く存在したことから、予備実験としてEBウィルスに感染させセルライン化したDNAを用いて、各ステップの条件設定を詳細に行なった。遺伝子発現の制御に重要であるプロモータ領域におけるメチル化解析を効率よく行なうために、制限酵素によるDNAの切断と適切なサイズ分画を回収した。その後、次世代シーケンサーであるIllumina社のGenome Analyzerで解析するためのライブラリー化を行なった。最終的な結果は、このライブラリーの質に大きく左右されるため、慎重な条件設定を行なった。ライブラリー化されたサンプルを、バイサルファイト(重亜硫酸)処理し、非メチル化シトシンのウラシルへの変換を行なった。この行程もプロトコルの適切な条件設定に時間を要した。本派遣期間中には、本実験のデータを得るまでには至らなかったが、各ステップにおける適切な条件設定を確立できたため、引き続き現地において、実験補助者が実験を進めている段階である。
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