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事業報告

事業番号:20-059

野生オランウータンの社会的近接場面における行動とストレスに関する予備的調査

報告者:山崎 彩夏

期間:2009/02/23 - 2009/03/27

従来、オランウータンは大型類人猿の中では単独性の傾向が強く、野生下では他個体との接触頻度は低いとされてきた。しかし飼育環境下ではグループ飼育や異種との混合飼育に順応し、多様な社会的行動を表出する。また近年の研究により、果実の生産量が増大する時期には複数個体が同じ樹木を共有し採食するなどの社会的受容性を示すことが確認され、オランウータンは他個体の行動を手がかりに適応的な情報や技能を獲得することも示唆されており、これらの社会的受容能力はオランウータンの生存において重要な役割を果たしていると考えられる。しかしながら、このような社会的近接がオランウータンに与える影響に関し定性・定量的な分析はなされていない。そこで、他個体の近接がオランウータンに与える影響に関して行動観察と糞中ストレスホルモンの生理学的分析に基づいた調査の可能性、およびその調査内容の具体的検討を目的とした予備的調査として本事業を実施した。

申請者は2月23日よりマレーシア国へ渡航し、24日よりサバ州ダナムバレー森林保護区のBorneo Rainforest Lodge(以下BRL)にて、2004年より同区でオランウータンの研究を行う金森朝子氏および久世濃子氏の調査に5日間同行した。その後、クアラルンプールの連邦政府経済企画局にて調査許可証の交付を受けた。また、サバ州コタキナバルにて調査査証申請、カウンターパートとの打ち合わせ、サバ大学熱帯生物保全研究所の見学等を行った。さらにサンダカンのSepilok Orangutan Rehabilitation Centreにて予備観察を2日間行った。
3月11日にダナムバレー森林保護区のDanum Valley Field Centreを訪問し、採取した糞サンプルの保管に関し具体的な相談を行った。その後、BRLに13日間滞在し、オランウータンの行動観察および糞採取法の検討を主とした予備的調査を実施した。その結果、調査日12日のうち総観察時間は56時間59分であった。また11個体に遭遇し、うち3個体が初めて確認された個体だった。さらに追跡中に観察対象個体に他個体が近接する場面を3回確認した。その後、コタキナバルにて調査査証を取得し帰国した。










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