English

事業報告

事業番号:20-029

コンゴ民主共和国ワンバ地区に生息するボノボの社会集団構造の研究および保護の推進

報告者:黒田 末壽

期間:2008/08/20 - 2008/09/25

ボノボの集団同士は対立的から平和的まで柔軟な関係を構築することができる。これはチンパンジーには見られず、人類とボノボだけに共通する性質であり、なにがそのベースになっているかを解明することは、人類社会の進化過程を復元する際に重要な材料になる。このような課題解決は長期調査の継続によるしかないが、コンゴで内乱が生じたため調査が中断され、これまでのところ未解決にとどまっている。ボノボの複数の社会集団を詳しく観察できる地域はワンバ地区だけで、本調査が必要とされた所以である。
また、ワンバ地区周辺に生息するCercopithecus salongo (dryas?)は日本人調査隊が発見した新種のサルで、その帰属がまだ不明のところがある絶滅危惧種である。このサルは Cercopithecus属ではブッシュの下層部を利用し地上性傾向が強いという特殊なニッチェをもち、Cercopithecus類の進化研究に重要な種であるが、生態・行動ともに情報がほとんど無い。なによりもまず、生息状況の把握と保護の施策が必要な種である。

8月20日:日本(関空)出発、22日:キンシャサ着
23-24日:研究連絡・調査準備
25日:チャーター機でDjolu着・地方行政手続き、27日:ワンバ着
28-31日 ワンバ村住民との交渉(保護・雇用条件・地域貢献事業うち合わせなど)

9月1-15日 ボノボとサロンゴモンキー調査
ボノボの調査はE1グループ中心に行った。E1は9月には1970年代からのコアエリアを遊動した。その期間中、西南の隣接集団Pグループとほぼ毎日接近、幾度か平和的交渉と攻撃行動の直接接触をした。この間にPグループの幼い子連れのメスが継続してE1に滞在して交尾し、9/15にPグループに戻った。若い移籍中のメスが小枝を使って追い掛け合いする遊びをしていたが、E1の子どもたちがまねをし出した。
サロンゴモンキーは集落そばを遊動する個体を確認した一方、2006年に5群確認できた旧プランテーション跡では一度も所在を確認できなかった。

9月16-17日:Djoluで行政手続き、18日:チャーター機でキンシャサ着
9月19-21日:研究連絡
9月22日:キンシャサ発、9月25日:日本(関空)着


オスのグルーミング:E1グループが倒木上で休んでいるところ。


看板:調査隊の協力でボノボ保護基金による村の診療所が立った。これは診療所の看板。


ワンバの子どもたち:森や川に山菜や魚を捕りに行くところ。

HOPE Project<>