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事業報告

事業番号:20-016

野生オランウータンのオスの社会行動に関する研究

報告者:金森 朝子

期間:2008/08/07 - 2008/08/25

ダナムバレー森林保護地域で野生オランウータンの調査を2004年より開始して5年が経過した。調査地における個体識別及び血縁関係、各個体の遊動域や行動、食物、他の個体との社会関係を明かにするには、長期間のモニタリングによる基礎データの蓄積が重要である。これまでの調査と同じく15日間の追跡調査と5日間の落下果実センサス、ネストセンサスを行った。これまでの調査で37頭の個体を識別した(Flanged male:5,Unflanged male:8,Mother and baby:7pair, Adolescent male:2, Adolescent female:2, Juvenile male:1, Juvenile female:2)。果実生産量のパターンや採食行動、定住個体の親子関係を含む社会関係などが少しずつ明らかになり、徐々に全体像が見えるようになってきている。

2008年8月に申請者が行った調査では、10頭 (Flanged Male: 2 頭、Unflanged Male: 1頭、Mother and Baby: 3組、Adolescent Female: 1頭) を追跡した。月末には、オランウータンの生息密度を調べるネストセンサスと果実量を調べる落下果実センサスを計5日行った。
2004年から継続した落下果実センサスの結果では、本調査地では雨季が終わる6月下旬から乾季が続く8月下旬までの期間に果実季があることが明らかになっている。2005年、2007年のこの時期には、一斉開花も起った。しかし、今回の調査である2008年の果実季は、果実生産量がとても少なかったのが印象的であった。それだけでなく、通年では5月-6月に結実しているTerminalia citrina (COMBRETACEAE)が8月下旬まで果実が残っていたり、8月下旬にはオランウータンによって食べつくされていたDurio zibethinus (BOMBACACEAE)が未だ開花していなかったりと、果実生産季の遅れ、もしくは生産量の減少が起きていた。現地の人々の話によると、今年は特に雨季が長かったため果実がならなかったのではないかということであった。本結果は改めて過去のデータと比較・検討してみたいと考えている。


新しいフランジのオス(Ali)


ワカメス(Sheena)

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