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事業報告

事業番号:20-012

飼育ボノボにおける社会的行動の発達に関する研究

報告者:田代 靖子

期間:2009/02/18 - 2009/03/12

ボノボはコンゴ民主共和国だけに分布する種であり、野生で観察できる調査地は限られている。また、野生群を対象とした場合、観察条件の悪さから社会的行動の詳細な記録は難しい場合が多い。今回、調査地として選んだLola ya Bonoboでは、自然植生を利用した広大な放飼場でボノボを群れ飼育しており、野生群に比べると観察条件が良い。2005年以降に施設内で出産された個体を除いて各個体間に血縁関係が無いこと、最年長個体でも20歳代であると推定されていることなど、野生群との相違点はあるが、行動の発達を詳細に記録するには適した場所だと考えられる。また、コドモの社会行動の発達的変化をとらえるため、同じ母子の観察をもとに経年変化を分析したいと考えたため、昨年度と同じ調査地を選び、調査をおこなった。

2009年2月18日から3月12日まで、コンゴ民主共和国キンシャサ市郊外のサンクチュアリLola ya Bonoboにおいて、ボノボを対象とした社会的行動の調査をおこなった。現地調査期間は17日間である。
同施設で保護されている個体は61頭である。施設生まれの個体は8頭で、そのうちの6頭とその母親を対象としてデータ収集をおこなった。いずれも昨年度の対象個体である。ビデオカメラを用いてコドモの個体追跡をおこない、母親を中心とする群れ内他個体との社会交渉とその方向性について記録した。また、ボノボ特有の行動である性器接触行動について、個体の組み合わせやパターンに関するデータを収集した。
昨年度までの調査と比べると、コドモの発達につれて母親との距離は徐々に遠くなり、母親以外の個体と遊びやグルーミングなどの社会交渉を持つことが多くなっているようである。また、移動の際にも、コドモが母親に背負われて移動する割合が減少し、コドモが先に移動を開始したり、目視できない距離まで離れて移動したりするのも観察された。今後、詳細な分析をおこなう予定である。


田代:ボノボの母子


田代:コドモと若者オスの遊び

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