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事業報告事業番号:20-003-3 キナバタンガン川下流域のテングザルの社会・生態学研究 報告者:松田 一希 期間:2009/02/24 - 2009/03/10 ボルネオ島の固有種であるテングザルは、コロブス亜科の中で体重が最も重く、川辺林、泥炭湿地林、マングローブ林という特異な環境にのみ生息するという点で、コロブス亜科の生態と社会の多様性を明らかにする上で、非常に重要な種である。しかし、テングザルの生息地の多くは泥濘で足場が悪いため、林内において本種の詳細な行動観察を行うことが困難であった。そのため、先の研究の多くは、川沿いにおいてテングザルを高頻度に観察できる早朝と夕方という短い時間帯にボートから観察するという手法が用いられてきた。しかし、川沿いという限られた場所と、朝夕という限られた時間帯の観察では、本種の基本的な生態すら明らかにすることは困難であった。そこで申請者は、林内での観察が比較的容易な川辺林を調査地として選定し、林内におけるテングザルの生態・社会を明らかにすることを目的に現地での調査を行なった。 申請者は、2009年2月24〜3月10日の間マレーシアへ渡航し研究活動を行った。特に本渡航では、マレーシアで調査するための調査許可証の更新に多くの時間を費やした。サバ州・コタキナバル市内にある野生生物局を訪問して、カウンターパートに研究の報告書を提出して、許可証更新に必要な書類を受け取った。その書類を持って、経済企画局を訪問して、研究成果を報告したのちに、無事に許可証の更新を行うことが出来た。申請者は、現在サバ大学のHenry Bernard氏、シンガポール動物園のJohn Sha氏と共同でテングザルに関する本を執筆しており、その本の内容を議論するために、数日間の打ち合わせも行った。また、本渡航では、Henry Bernard氏が長期の研究を行っているKliasという地域を訪問してテングザルの行動観察を行った。Klias地域の植性はマングローブ林であり、申請者が行っている川辺林に生息するテングザルとの生態・社会に関する比較研究を行えば、本種が様々な生息環境に適応できた進化の過程をさぐることも可能かもしれない。
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