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事業報告事業番号:20-003-2 キナバタンガン川下流域のテングザルの社会・生態学研究 報告者:松田 一希 期間:2008/11/24 - 2008/12/08 旧来は葉食者としてひとくくりにされ、採食競合のはたらかない、単純な社会を持っているとされることの多かったコロブス亜科のサルだが、実際には葉だけでなく、種子や果実などの競合の起こりやすい高質の食物の採食が無視できないものであることが次第に明らかになり、生息環境が社会に与える影響を探る社会生態学モデルの検証に、重要な役割を果たすようになってきた。ボルネオ島の固有種であるテングザルは、コロブスの中で体重が最も重く、泥炭湿地林やマングローブ林という特異な環境にのみ生息する点で、コロブス亜科の生態と社会の多様性を明らかにする上で、非常に重要な種である。しかし、足場が悪く詳細な観察が困難な環境を生息地として好むことからその研究例は少ない。そこで申請者は、林内での観察が比較的容易な川辺林を調査地として選定し、林内におけるテングザルの生態・社会を明らかにすることを目的に現地での調査を行なった。 申請者は、2008年11月24〜12月8日の間マレーシアへ渡航し研究活動を行った。サバ州・コタキナバル市内では、野生生物局を訪問してカウンターパートと研究の報告、打ち合わせをした。また、サバ大学の熱帯生物保全研究所において、マングローブ林でテングザルの長期観察を行っているHenry Bernard博士を訪問し、研究成果の情報交換を行った。調査地のあるスカウ村においては、そこに設置してある植生調査区内の、胸高断面積合計の上位20種の植物の成熟葉と新葉の収集を行った。加えて、夕刻にボートによるセンサスを行い、川沿いに泊まるテングザルを含む霊長類のカウントを行った。調査終了後、サバ州の森林研究センターにおいて収集した葉を乾燥させ、日本へのサンプル持ち出しの許可証の申請と取得を行った。今後は、持ち帰ったサンプルの栄養成分の分析を行うことを予定している。
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