事業報告

事業番号:19-057

マックスプランク進化人類学研究所における研究交流および研究計画

報告者:三浦 優生

期間:2007/12/10 - 2008/03/03

派遣先であるマックスプランク進化人類学研究所は、人間の社会認知の能力や言語能力の発達に関して、専門性の高さを保ちつつ垣根を越えた学際的研究を行う、世界でも数少ない環境を持つ。申請者はこれまで、言語やパラ言語を手がかりとした他者理解の能力の発達について研究を行ってきたが、言語学や音声学を基礎に持つ研究者や、心理学を基礎に持つ研究者が互いに交流を持つことのできる場所において研究発表・研究交流を持つことは、今後の自身の研究を発展させるにあたり意義の深い経験となるだろうと考えた。また、言語間・文化間での比較を行うことは、発達におよぼす環境的要因や、言語普遍的な特徴を考察するための貴重なデータをもたらすだろうと考え、申請者は、日本語とは文法特性や言語の使用環境の異なるドイツ語圏の幼児を対象とした実験を遂行し、国際比較を行うことを希望した。

申請者が訪れた発達・比較心理学研究科は、専門分野を霊長類の認知、ヒトの社会認知、言語発達とする三つのセクションから成る。それぞれが開催するセミナーでは、研究発表や招待講座、論文紹介などが頻繁に行われ、専門分野や周辺領域への知識を深めるべく盛んな意見交換が行われていた。申請者はこれまでに行った研究についての発表を行い、所属する研究者より今後に役立つコメントを数多く得ることが出来た。
また、研究所所長のMichael Tomasello氏、社会認知セクションのHannes Rakoczy氏に助言を頂き、ドイツ語話者の3,5歳児を対象とした、イントネーションや語彙に基づく他者理解の研究を計画し、ライプツィヒ市内の幼稚園にて実験課題を行った。予備実験からは、日本語話者の幼児とは異なる発達傾向が見られている。申請者は帰国後も引き続き行われるデータ収集により国際比較を行い、言語・文化間の違いが発達に及ぼす要因を考察していく。


マックスプランク進化人類学研究所


ドイツ語話者の幼児を対象とした実験の様子(1)


ドイツ語話者の幼児を対象とした実験の様子(2)

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