事業報告

事業番号:19-056-2

ダナムバレー森林保護区の霊長類の群集生態学

報告者:半谷 吾郎

期間:2007/11/28 - 2007/12/08

陸上生態系でもっとも生物多様性の高い熱帯雨林において、多種の霊長類が共存している機構を明らかにするには、複数の霊長類の食性、土地利用、生息環境などの季節変異を、同時に調査する必要がある。そのような研究はアフリカや中南米では行われてきたが、東南アジアではまだ行われていない。東南アジアには、ほかの熱帯林に例を見ない、数年に一度しか起こらない一斉開花・一斉結実という現象が知られている。そのように果実生産の季節性の強い熱帯林で、霊長類の共存の機構を明らかにすることは重要である。本研究は、東南アジア熱帯林での霊長類の共存機構を明らかにすることを目的に、現地での野外調査を行った。

申請者は2006年9月からマレーシア・サバ州(ボルネオ島)のダナムバレー森林保護区で、昼行性霊長類5種の群集生態学的調査を行っている。マレーシア人のアシスタントが申請者の不在中も現地で資料収集を継続している。
2006年9月から、調査地にある総延長9.9kmのトレイルを利用して、ライントランセクト法による霊長類の密度センサス、オランウータンのネストセンサス、落下果実のセンサスを行ってきた。また、5種の中でもっとも遭遇頻度が高く追跡が容易なクリイロコノハザルの直接観察による調査を2006年12月から、そのほかの霊長類の観察を2007年5月から行っており、今回の滞在中も直接観察の資料収集を重点的に行った。クリイロコノハザルの追跡は、1日間、8時間オランウータンの追跡を2日間、16時間行うことができた。10分に1回、見える範囲のすべての個体の活動(移動、休息、採食、毛づくろい)、その個体のいる高さ、その個体のいる木の高さを記録し、採食している場合は食物サンプルを収集して、同定した。また、過去1年半の調査で収集した食物および果実サンプルの整理を行い、単位乾燥重量を計測した。また、帰途マレーシアの首都プトラジャヤにある連邦政府の経済企画局を訪問し、調査許可書更新申請を行った。


オランウータンが食べた樹皮


レッドリーフモンキーが食べたつるの茎

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