事業報告

事業番号19-052

国際遊び学会(IPA)での口頭・ポスター発表と、ニューヨーク・ブロンクス動物園のニシローランドゴリラのコドモの遊びの観察

報告者:島田 将喜

期間:2007年4月17日 〜 2007年5月2日

霊長類を含む動物の遊び行動の研究は動物行動学全体から見て進展の遅い分野の一つである。こうした現状の下で、私自身がニホンザルを対象として行った遊びの研究を国際的な場でアピールし、また自分の研究に対する動物やヒトの遊びの研究者から国際的な評価・批判を受けることは必要である。また遊びの研究における現状での問題の所在を見極め、この分野で共同研究しうる人脈の構築を図ることなども有益であると考えた。そうした場として国際遊び学会(TASP:4月25日-28日)はふさわしく、そこで私の公表・未公表の論文を口頭・ポスター発表することを目的とした。ニューヨークのブロンクス動物園には、多くのコドモ個体を含むニシローランドゴリラの群れが飼育されており、頻繁な遊び行動が観察されることが知られている。そこで学会発表の機会を利用して観察を実施し、今後ニホンザルやチンパンジーのコドモの遊び行動と比較しうる行動の映像資料を収集することは有益であると考えた。

ニシローランドゴリラのコドモをブロンクス動物園で観察した。滞在中体調不良により、観察は1日だけ、4時間あまりにとどまったのが残念だったが、間近にゴリラのコドモの遊びを詳しく観察することができ、有意義であった。例えばゴリラのコドモの遊びにはさまざまなレパートリーがあり、他の霊長類と共通すると考えられるもの(例えば野生チンパンジーでもよく見られる「ぐるぐる回り」など)やゴリラに特有の可能性が高いもの(例えばドラミング遊び)も観察された。またもっと頻繁に観察されると予想していた父親(つまりシルバーバック)との遊びは一度も観察されなかった。NY州ロチェスター市にある、遊びに関する博物館としては世界最大規模と称される、ストロング遊び博物館において実施されたTASP/IPAの合同大会に発表者として参加した。この場において、二つの研究発表(口頭・ポスター)を行った。発表後、聴者から多くの質問やコメントが寄せられた。また北米を中心とする遊び研究者との情報交換、共同研究の提案など、具体的な関係構築ができたことが大きな収穫であった。


口頭発表


ポスター発表


ゴリラと私

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