事業報告

事業番号:19-050

インド東北地方における霊長類の分布と生息実態の調査

報告者:濱田 穣

期間:2007/10/11 - 2007/11/11

インド東北地方は、気候条件・環境条件が多様であり、インド、中国、東南アジアの動物相の交流ルートのひとつである。霊長類では、ブラーマプートラ河の左岸(東側)にマカク4種が分布し、右岸には2種(もしくは3種)が分布している。これらのうちアッサム・モンキーは異なる亜種がそれぞれに分布し、右岸のペロプス亜種と最近報告されたムンザラ種マカクの系統関係が注目されている。また、左岸のマカク4種は同一の生息環境を共有している地域もあり、その共存をどう成し遂げているのかについて、興味がもたれる。しかしながら、この地方はながらく政情不安のために、外国人の入域が制限されていた。最近、入域制限が緩和されたので、今後の研究の可能性をさぐるためにも、予察調査が必要とされた。そして、できればムンザラ種を観察し、ブータンやネパールなどで観察されているアッサム・モンキーとの形態学的類似性を検討することが理由である。

グワハティ市に空路入り、アッサム州西部にあるTukreshwari寺院のアッサム・モンキー(200頭程度で2-3群を構成)とボウシ・ラングール(1群れ、7頭)を観察した。カジランガ国立公園の後背山地(保護区)は、比較的よく森林が残り、霊長類が密に分布しているようだ。ギボンズ野生生物保護区では、マカク4種、ボウシラングール、フーロック・テナガザルの共存を確認した。約20平方Kmのこの保護区は、棲分け研究の適地だと評価された。
アルナーチャル・プラデシュ州の西部地域で、BhalukpungからTawang経由、Zemithangまでの幹線道路沿いに、インタビューと直接観察によって、霊長類、主としてムンザラ種マカクの分布・生息実態調査を行った。4箇所の道路わきの林で、ムンザラ種を観察できた。特にZemithang村周辺の河原林の2群は、生態・行動研究の良い対象であると評価された。ムンザラ種は、標高2,000m以上の地域に見られ、それ以下ではアカゲザルが分布しているようである。

アッサム州西部Goalpara近くのトゥクレシュワリ寺院(Tukreshwari, GPS北緯26度03分、東経90度38分、標高38m)に生息するアッサムモンキー(Macaca assamensis assamensis)。この寺は独立した小さな山(標高135m)で、ここに餌付けされたアッサムモンキーが2-3群2-300頭、およびボウシラングール1群6-8頭が生息している。

アッサム州東部ジョルハート市近郊のギボンズ野生生物保護区(Gibbons Wildlife Sanctuary, 約20平方km、GPS北緯26度45.5分、東経94度12.7分、標高95m)に生息するボウシラングール。この保護区には霊長類として、マカク4種(アカゲザル、アッサムモンキー、ベニガオザル、ブタオザル)、フーロックテナガザル、およびスローロリスが、他にゾウやヒョウなどが生息している。

アルナーチャル・プラデシュ州の西部山岳地帯で、2005年に報告されたアルナーチャルモンキー(Macaca munzala)は、標高2,000m以上の地域で見出される。この個体は、同州最西北地域にあるZemithang村近くの河原林で観察された。写真1のアッサムモンキーにかなり似ているが、毛色が濃くまたその密度が高い、そして頭頂にクレストが見える。

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