事業報告事業番号:19-044 ゴリラの遊び行動における環境的・社会的影響に関する研究 報告者:松原 幹 期間:2008/03/05 - 2008/03/31 ヒトもふくめた霊長類の心身発達の進化的、文化的基盤の研究のために、類人猿の遊び行動が注目されている。遊び行動のバリエーションは、群れやコミュニティの性年齢構成や 遊び道具になりうる住環境の物質に影響される。類人猿の中ではゴリラの遊び行動の研究は少ない。イギリスのハウレッツ・ポートリンプン野生動物公園ではゴリラの家族群5群を飼育し、その内の1群は一般的な動物園でみられる上部を開放したガーデン型の放飼場と、同園の特徴である巨大なメッシュ・ケージで飼育されていため、ゴリラの飼育環境の利用を研究する上で好条件といえる。また、野生群と同様に未成熟個体の性年齢に極端な偏りがないため、社会関係の観察にも適している。 イギリス南東部の私立動物園、ハウレッツ・ポートリム野生動物公園にてニシローランドゴリラの行動観察、特に遊び行動の調査を行った。同園の敷地はカンタベリーに近いハウレッツと海岸部のポートリムに分かれ、ハウレッツではゴリラの家族群4群を、ポートリムでは家族群1群とオス群2群を飼育している。今回はポートリムで飼育される家族群(ジャラ群)を対象に7頭の未成熟個体(1歳雄雌各1頭、4歳雄1頭、6歳雄1頭、7歳雄雌各1頭、8歳雄1頭)を中心に14頭を観察した。飼育環境は室内と屋外(壁面と天井に鉄製メッシュを張りめぐらせた放飼場と、芝生やシイ類、イラクサ等が生え、木製櫓が建てられたガーデン・エリア)から成る。遊びに使用される物体の種類や遊びをする空間の環境特性は、乳児とそれ以上の未成熟個体の間に違いがみられ、乳児において天井部と壁面利用が長時間観察された。また、独り遊びは乳児に長時間みられ、他個体との社会性を伴う遊びはそれ以上の個体で多くみられた。なお乳児の他年齢との社会的な遊びの頻度には個体差がみられたが、発達程度や個性、性別による影響については対象個体数が少ないことから解析困難であるため、観察対象数を増やす必要性がある。
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