事業報告事業番号:19-041 野生オランウータンのオスの社会行動に関する研究 報告者:金森 朝子 期間:2007/06/07 - 2007/08/17 ダナムバレー森林保護地域で野生オランウータンの調査を2004年より開始した。調査地における個体識別及び血縁関係、各個体の遊動域や行動、食物、他の個体との社会関係を明かにするには、長期間のモニタリングによる基礎データの蓄積が重要である。これまでの調査で、29頭の個体を識別し、そのうち19頭は調査地周辺に滞在する定住個体であることがわかってきた。採食のパターンや定住個体の社会関係なども少しずつ明らかになり、調査4年目にしてやっと全体像が把握できて来た。 2007年6月−8月に申請者が行った調査では、定住個体を9頭追跡した。全観察時間は126時間19分(16日間)であった。追跡した個体は、計11頭 (Flanged Male: 2 頭、Unflanged Male: 3頭、Mother and Baby: 2組、Adolescent Female: 2頭)であった。また、オランウータンの生息密度を調べるネストセンサスと果実量を調べる落下果実センサスを計18日(毎月5日+α)行った。 今回の調査期間中7月末から8月にかけて、小規模な一斉開花が起こった。この時期には森林の果実生産量も増加した。特に調査地内にあるドリアン(BOMBACACEAE Durio zibethinus)の果樹には、複数のオランウータンが入れ替わりにドリアンを採食しに訪れていた。本調査地に生息するオランウータンは、大まかに、川を挟んで2つの地域個体群があることが近年わかって来ている。今回初めて、異なるエリアのkingという名のFlange Maleが他のエリアに訪れてドリアンを採食していたのを観察した。
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