事業報告

事業番号:19-034

フランス鮮新世産オナガザル上科の頭蓋骨化石のCT撮像

報告者:西村 剛

期間:2007/09/26 - 2007/10/03

CTによる化石の内部構造の分析が容易になった昨今、顔面頭蓋の内部構造による化石種の系統分析が注目を集めている。派遣者らは、すでに鮮新世タジキスタン南部産のParadolichopithecus sushkiniのCT分析を行い、同属の所属系統を検討した(Nishimura et al., 2007)。さらに、派遣者らは、フランス・パリ国立自然史博物館(パリ)のSenut教授らと、フランス鮮新世産化石オナガザル上科霊長類のCT分析の共同研究を推進しており、すでに、同館所蔵のコロブス亜科Dolichopithecus ruscinensisや化石Macaca種のCTデータを収集し分析を進めている。同国リヨン第一大学には、Paradolichopithecus arvernensis (同属の模式標本)とD. ruscinensisの良質な化石標本が所蔵されている。それらのCT画像資料の収集と比較分析は、上述の研究の推進に不可欠である。

今回の派遣では、まず、共同研究者の Senut教授とともにリヨン第一大学・ Abel Prieur博士を訪問し、同大地質学コレクションにあるP. arvernensisD. ruscinensisの顔面頭蓋骨標本を借り出した。 次に、トゥールーズ・パストゥール病院のJacque Treil氏の協力のもと同病院のCT装置を用いて、その化石標本の高解像度の連続断層画像資料を収集した。その後、再び、リヨン第一大学・ Prieur博士を訪問し、化石標本を返却するととともに、今後の研究協力について協議した。最後に、パリ自然史博物館でCT画像データを予備的に分析するとともに、今後の研究計画について打ち合わせを行った。これら得られたCT画像資料の分析により、 P. arvernensisP. sushkiniとの系統学的関係や神奈川産コロブス化石とDolichopithecusとの分類学的関係の検討が進むと期待される。


フランス・パリ国立自然史博物館(古生物学)


リヨン第一大学・地質学コレクション


トゥールーズ・パストゥール病院でのCT撮像の様子

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