事業報告

事業番号:19-027

チンパンジーとフサオマキザルにおける他者の注意状態の認識と身振りの生成

報告者:服部 裕子

期間:2007/08/14 - 2007/08/24

平成19年8月15日〜22日にカナダ国Halifax市において開催された第30回国際動物行動学会(IEC)において、平成17年度、18年度に霊長類研究所共同利用研究として行われた研究の成果発表をおこなうとともに、関連研究者との討議および情報交換を行う。

8月16日に ”Begging for food vs. on the table : Chimpanzees and capuchin monkeys understand others’ attentional states” と題した5分間のポスタートークおよびポスター発表を、黒島妃香(日本学術振興会、ジョージア大学)、友永雅己(霊長類研究所)、藤田和生 (京都大学文学研究科)と共同でおこなった。多くの訪問者があり、活発な議論が行われた。またポスタートークにかんして、Student Poster talk Competition にて3位に選ばれCambridge University Pressより記念品をいただいた。発表要旨邦訳は以下の通り。

 他者の注意の状態を理解する能力は、ヒトでは心の理論の先駆けとなる重要な能力として認識されている。本研究では、ヒト以外の霊長類が他者の注意の状態を理解しているのかを調べるために、先行研究と同様「実験者に餌をねだる」という状況を用いつつ、実験者の注意を引きつけるだけで良い状況と、なおかつ対象物に実験者の注意を誘導しなければならない状況を設け、彼らの注意の状態の認識が異なって反映されるのかについても調べた。結果、チンパンジー、フサオマキザル両種とも実験者の注意を引きつけるだけでよい状況では、実験者の細かな視線に応じて柔軟に行動を変化させていたにもかかわらず、なおかつ実験者の注意も誘導しなければならない状況ではそうした行動の違いは見られなかった。これらの結果から、ヒト以外の霊長類も他者の注意の状態を理解することが示唆され、またその能力は課題の性質によって異なるように反映されることが示された。


Dalhousie University


poster session

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