事業報告

事業番号:19-024

ユーラシア大陸北部における鮮新世ウドゥンガ哺乳動物相中の食肉類化石の古生物学的研究

報告者:荻野 慎太郎

期間:2007/07/03 - 2007/07/14

旧世界ザルのコロブス類Parapresbytis eohanumanを含む,トランスバイカル地域の鮮新世ウドゥンガ哺乳動物相の食肉類化石は,新第三紀を通じてヨーロッパ,北米から互いに近縁と考えられる種が報告されている.新第三紀の旧北区における旧世界ザルの東進は,旧世界ザルと共存していた他の陸生哺乳類からある程度推定することが可能であるため,本研究では,この時代の新旧北区に分布していたイタチ類およびレッサーパンダ類に着目し鮮新世の北半球における動物群の拡散経路を古生物学的に研究することを企画した.しかしながらこれらの分類群の標本は世界的に見ても産出が少なく,また報告から100年以上を経過しているものもあるため,現地で直接標本を観察する必要があった.今回,中央ヨーロッパ地域の化石動物群の比較検討をするためポーランドおよびドイツに赴き,標本写真および計測値などの詳細なデータを得ることができた.

今回の派遣研究においてヨーロッパ東部地域の食肉類化石の歯列の計測データを,合計12属16種得ることができた.これは事前に予定していた種数を超えるものである.ポーランド科学アカデミーにおいて得たアナグマ類の絶滅種Arctomeles pliocaenicusの形態学的特徴は,ウドゥンガ産大型イタチ類との類縁関係を支持する結果となるものと考えられる. レッサーパンダ類化石は,鮮新世の新旧北区に見られる分類群として動物群の構成を比較する上で重要であるが,発見された標本数および産出地点が極めて少ないのが現状であった.ウドゥンガ産Parailurusは下顎骨と下顎歯列が見つかっているが,この部位はルーマニアとドイツでしか見つかっていない.これらを比較すると,ウドゥンガ産Parailurusはこれまで知られているP. anglicusに比べやや大型で低歯冠であり,新種であることが考えられる.


第二次大戦後に復元されたワルシャワ旧市街地


ポーランド南部のクラクフにあるポーランド科学アカデミーの標本収蔵室.


マイン川のほとりから見たフランクフルトの大聖堂

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