事業報告

事業番号:19-017

東南アジアに生息する現生蛇類椎骨の比較形態学的研究

報告者:池田 忠広

期間:2008/03/17 - 2008/03/26

現在、タイ北部中新世Chiang Muan炭鉱から、ヒト上科を含む多くの脊椎動物化石と伴に、多くのヘビ類椎骨化石が産出している。これらヘビ類化石の分類学的置位を明らかにすることは、ヒト上科の進化の背景となる中新世の東南アジアの古環境分析に大きく貢献するものと考える。それらヘビ類椎骨化石の分類学的置位を特定するためには、東南アジア地域に生息する多くの現生ヘビ類の椎骨形態情報が必要不可欠である。しかしながら、現生ヘビ類の骨学的研究は頭骨に関するものが主であり、椎骨に関する形態情報は皆無に等しい。故に本研究では、タイ国チュラロンコン大学に赴き、同大学所蔵の現生ヘビ類標本を検討し、それらの骨学的特徴を明らかにすることに努めた。

本研究活動では、タイ国チュラロンコン大学を訪れ、同大学所蔵の5種 (Acrochordus granulatu, Chrysopelea ornate, Enhydris enhydris, Homalopsis buccata, Xenochrophis flavipunctatus)の現生ヘビ類標本の椎体形質について検討を行った。いずれの標本もホルマリン固定された液浸標本であった為、同大学の実験室にて解体し骨格標本を作製した。そして、双眼実態顕微鏡下で29項目の詳細な椎体形質の検討を行い、得られたデータとこれまでの研究で明らかにしている上科・科といった各階級の椎骨標徴との整合・相違点を検討した。その結果、いずれの種の椎体形質も各階級の標徴と整合し、また今回5種について検討できたことで、新たにAcrochrdusやEnhydrisの標徴を定義することが可能となった。しかしながら、得られた種は東南アジア地域に生息する現生ヘビ類の極一部であり、Chiang Muan産ヘビ類椎骨化石の分類学置位を明らかにするには、さらなる現生ヘビ類標本が必要である。


Chulalongkorn University







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