事業報告事業番号:19-015 マレーシア・サバ州におけるテングザルの社会・生態学的研究 報告者:松田 一希 期間:2007/07/18 - 2007/08/21 ボルネオ島にのみ生息するテングザルの林内における詳細な研究は非常に少ない。人付け、個体識別をしたテングザルの群を長期にわってモニタリングした例は過去になく、我々が2005年1月より開始したマレーシア・サバ州におけるテングザルの生態研究を今後も継続していくことは、この特異な種の社会構造を明らかにする上で重要である。また、長期にわたる研究を行うためには、申請者が現地に居ない期間であってもアシスタントによる様々な基礎データの収集は不可欠であり、現地アシスタント、住居、ボートなどを管理するための基盤を作ることも必要である。 申請者が2005年1月より開始したテングザルの調査では、主にテングザルの基礎的な生態を明らかにすることを目的としていたため、特定の一群のみの同定・追跡を行ってきた。しかし、この方法では群内の社会交渉は把握できても、群間の交渉を把握することは難しかった。そこで今回の渡航では、テングザルの群れ間の社会構造を明らかにする手始めとして、継続して追跡している群以外のテングザルの単雄群と全雄群の同定を試みた。調査期間中、調査地としているマナングル川の河口から6 kmまでの間に、最大でテングザルの群れ12群を確認し、その内の6群の単雄群と全雄群を同定することができた。また、マレーシア・サバ大学において、長期にわたり追跡してきた群から採集した31個の糞サンプルのDNA抽出を行った。今回抽出したDNAを用いて、今後はマイクロサテライトによる父子判定を行う予定である。調査地から最も近い村であるスカウ村を基点に活動しているNGOとの話し合いにより、申請者が調査地に居ない期間のアシスタントのサポート、ボートの管理は、そのNGOの協力により行っていくことが決まった。また、研究計画書の内容について、現地カウンターパートとの話し会いの後、連邦政府に調査許可証の申請を行った。
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