事業報告

事業番号:19-010

心臓自律神経系の形態からみた霊長類の比較進化形態学的解析

報告者:川島 友和

期間:2007/04/20 - 2007/06/08

 私はこれまで、京大霊長研共同利用、大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)、HOPE、国内外動物園・博物館などの協力や援助を受けて、霊長類の比較形態学的解析を行ってきた。その中で、特に心臓自律神経系の一般的解剖学的特徴は、〜特に神経節の構成や位置、神経の起始範囲など〜において、その系統進化をよく反映していることを明らかにしつつある。 しかしながら、これらの霊長類におけるダイナミックな形態変化を論じる際に、未解析かつ入手困難な種が多く含まれていており、それらを国内において解析する事は困難であった。そのため、海外においてそれらの材料を解剖用として保存している研究機関において研究を行った。

心臓に分布する自律神経系には、大きく交感神経系と副交感性の迷走神経の2系統が存在し、起始(一般にそれらの起始主要部は頚部である)から末梢心臓分布まで非常に長い経路を有している。今回の解析では、類人猿の心臓に分布する自律神経系に注目し、交感性神経系と副交感性神経系の2系統の起始から末梢分布までの形態を解析した。スイスのチューリッヒ大学人類学研究所においては、オス成体のオランウータン1体2側の頭頚部を中心とした解析(心臓自律神経系の主要部は頚部であることと剖検後の材料である事から胸部の解析は不可能であった)を、またアメリカのスミソニアン国立自然史博物館では、新生児ならびに成体を含む3体6側のテナガザルの頚部ならびに胸部を中心とした解析を行ってきた。また、オランダのロッテルダム自然史博物館では、今後の同様の解析のための研究打合せを行ってきた。これらの結果は、われわれの従来の結果や考えを支持するものであり、さらなる解析を必要としている。


スイス人類学博物館


アメリカ国立自然史博物館


アメリカ国立自然史博物館エントランスホール

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