事業報告
事業番号18-054
スミソニアン研究所におけるツパイ類、テンレック類、トゲネズミ類に関する適応形質の比較機能形態学的検討
報告者:遠藤 秀紀
期間:2006年7月19日 〜
2006年7月25日
スミソニアン研究所、自然史博物館 アメリカ合衆国
スミソニアン研究所は世界最大の自然史博物館であり、合計100万点を超える骨格剥製資料を擁している。申請者は同研究所のキュレーティングに参加、東南アジア産哺乳類の基礎的形態データを蓄積してきた経緯をもつ。今回、ここに収蔵されている哺乳類のうち、東南アジアおよびマダガスカル地域で、霊長類と生態学的に競合あるいは収斂関係にあるツパイ類、テンレック類、トゲネズミ類を選択し、骨格および液浸標本を用いて、頭蓋の視覚・咀嚼についての適応形質、四肢のロコモーションに関する適応形質を精査、哺乳類における霊長類的な適応表現型の実態を理論化することを目的とする。
本研究では、ツパイ類とトゲネズミ類を用いて、おもに頭蓋の骨学的適応形質を検出することに成功した。適応パターンを明確化する。各種が視覚と咀嚼システムについてどのような適応戦略をもっているのかを、機能形態学的に検証した。またテンレック類については四肢の形態学的形質の検討を進めた。テンレック類は、地上性、樹上性、あるいは半樹上半地上性のさまざまな生態学的地位を占め、キツネザル類との競合が過去において大規模に生じたとされてきた。ツパイ類は、かつて霊長類との近縁性が指摘されたことからも理解されるように、樹上性や半樹上性適応を遂げた種を多数含み、頭蓋や四肢において霊長類的適応形質に富んでいる。これらの観点に基づいて、主に骨計測額的データを収集し、議論を行うことに成功した。
今回の活動ではトゲネズミが特筆される。ごく最近私は同グループの種分化について新たな議論を提示している。スミソニアン研究所のトゲネズミ類のコレクションから得たデータにより、本グループの適応進化学的位置づけはさらに明確なものとなり、日本の南西諸島産哺乳類の新しい進化理論を構築することに大きく貢献するであろう。
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