事業報告

事業番号18-049

Nacholapithecusの大臼歯におけるエナメル象牙境およびエナメル質微細構造研究のための資料収集

報告者:清水 大輔

期間:2006年08月16日 〜 2008年09月20日

ケニア、イギリス

 大臼歯エナメル象牙境およびエナメル質の微細構造に関する形態学的研究はこれまで技術的な困難からあまり行われてこなかった。しかし、エナメル象牙境の形態は環境の影響を受けにくい形質であるとされており、化石種の系統的な位置を考える上で重要となる。一方で、エナメル質の微細構造は機能と密接に関連していることが最近の研究から示されている形質である。Nacholapithecusは中期中新世にケニアに生息した類人猿であり、類人猿特有の形質とオナガザルにも見られる形質をモザイク的に持っている種である。Nacholapithecusのエナメル象牙境およびエナメル質微細構造を明らかにすることは中新世における類人猿の適応放散を考える上で重要である。

 ケニア国立博物館に所蔵されている東アフリカ中新世類人猿化石のうち、象牙質の露出していない上顎第2大臼歯、計52標本をpQCTで撮像した。遊離した上顎第2大臼歯、もしくは上顎第2大臼歯を伴った上顎骨でpQCTのガントリーに入る程度の大きさに破損している標本は物を撮影に用いた。撮像した化石種は11属17種である。 Nacholapithecusについてはエナメルプリズムの観察に用いるため、低粘度歯科用印象剤(プロビールライト)を用い、壊れた上顎及び下顎大臼歯、計16標本の破断面から詳細な印象を取った。さらに、マイクロウエアの観察に用いるため、咬耗小面の詳細な印象をった。用いた標本は咬耗小面に比較的良好に保存されている上顎及び下顎大臼歯、計21本である。 連合王国、ローハンプトン大学のマチョ教授とは化石人類及び化石類人猿、現生霊長類のエナメル質の微細構造とその機能について意見の交換を行った。


ケニア国立博物館、
ただいま拡張工事中で2007年6月にリニューアルオープンする予定です。

 


人類、類人猿化石が保管されているストロングルームにて
博物館スタッフと一緒に。

 


ローハンプトン大学の裏に広がるロンドン最大の公園リッチモンドパークの風景。
ローハンプトン大学からリッチモンドパークが一望できます。

 

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