事業報告
事業番号18-040
国際霊長類学会参加、および野生マウンテンゴリラの遊び行動における環境的・社会的影響に関する研究
報告者:松原 幹
期間:2006年6月22日 〜
2006年7月6日
野生類人猿の保全学的研究には、現地の研究者の協力と様々な分野の専門家との協力関係が不可欠である。派遣研究者が共同研究者と共に解析した類人猿と地元住人による国立公園の植生利用の特徴は、説滅危惧種である類人猿の保全計画を作成するために重要な内容であるため、国際学会で公開する必要があった。
第二の派遣理由である類人猿の遊び行動の研究は、ヒトもふくめた霊長類の心身の発達の進化的、文化的基盤の研究にとって重要である。遊びのバリエーションは、群れやコミュニティの性年齢構成や
"遊び道具"になりうる住環境の物質に影響される。ゴリラは一般にシルバーバックを中心とする父系集団でまとまって遊動し、高山帯の草地や湿地、熱帯山地林や低地熱帯雨林と多様な植生を利用する。野生ゴリラを対象とした遊びの研究は、チンパンジーほど詳細に調べられてはいない。また、ゴリラと同所的にチンパンジーが生息する地域では、生息環境による行動発達への影響について種間比較する研究が将来的に可能と考えられる。
ブウィンディ国立公園はマウンテンゴリラとヒガシチンパンジーが生息し、かつヒガシローランドゴリラの生息するカフジ・ビエガ国立公園と同じ標高帯である。今後の類人猿の比較行動学的研究を推進する上で、これらの地域は重要なフィールドとなる可能性が高いことから、現地での植生や観察条件などを詳細に視察する必要があった。
ウガンダ共和国エンテベで開催された第21回国際霊長類学会大会に参加し、"Conflict
of land-use between great apes and humans in Kahuzi-Biega National Park,
D. R. C."という演題で研究成果を発表した。本大会では野生類人猿の研究者と保全関係者が多数参加していたため、様々な分野の専門家から有益な助言と共同研究の打診を受けた。
大会終了後に、ウガンダ南西部のブウィンディ国立公園南部ンクリンゴ地区に生息するマウンテンゴリラと生息環境の予備調査に向かった。ブウィンディで観光や研究目的で人に慣らされた4番目の群れのンクリンゴ群17頭(シルバーバックオス2頭、ブラックバック5頭、オトナメス4頭、若メス1頭、コドモ1頭、赤ん坊4頭)を対象に観察を行った。植生はカフジ・ビエガ国立公園の高部域と同種の植物が多数みられた。体サイズが近い2歳の個体2頭が片一方を叩き、叩かれた方が相手をつかみ、かぶさる行動がみられた際に、年長のシルバーバックが後者を引き離す行動が観察された。ンクリンゴ地区とカフジは環境の違いによる影響が少ないことから、マウンテンゴリラとヒガシローランドゴリラという亜種間の社会行動の比較研究に大変適した場所であることが明らかになった。
The mountain gorilla in the Bwindi National Park.
With Dr. Meder in the Mountain Gorilla & Rainforest Direct Aid.
With Prof. Wrangham, President IPS Council and Ms. Wrangham
HOPE Project<>
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