事業報告
事業番号18-036
東南アジア新生代後期の化石類人猿に関する形態学的研究
報告者:國松 豊
期間:2007年2月11日 〜
2007年2月25日
現在、東南アジアにはオランウータンとテナガザルが生息しているが、彼らの進化史については、まだよくわかっていない。更新世の化石産地からオランウータンやテナガザルの化石がいくらか報告されているが、それ以前に遡る類人猿化石は東南アジアではほとんどない状況である。したがって、この地域において、野外調査による化石の発見及び既存の化石標本の検討が必要とされている。
今回、HOPE事業により、タイ北部で中新世を対象とした古生物学的野外調査を実施した。また、ベトナム考古学院において、これまでにベトナム北部の更新世化石産地から採集されたオランウータン・テナガザル化石の標本調査をおこなった。
タイ北部では、チェンマイから東に百数十キロ離れたチェンムアン炭田において、採掘作業によって露出した中新世中期-後期の堆積層から化石を採集した。チェンムアン炭田においては、これまでにオランウータンサイズの大型類人猿の化石が発見されている。今回の調査では、この化石類人猿と同時代に生息していた哺乳類の追加標本を採集する事ができた。また、チェンマイより南にあるリー盆地メー・ロンにおいて、化石を含むと思われる粘土層のふるい作業をおこない、齧歯類などの小型動物の化石を産出する事を確認した。
ベトナムにおいては、首都ハノイにあるベトナム考古学院を訪問して、ベトナム北部の石灰岩洞窟遺跡数ヶ所から出土した更新世のオランウータンとテナガザルの化石の標本観察をおこなった。また、完新世のハン・チョー遺跡出土の動物骨遺物を聖マリアンナ医科大学の沢田純明氏と共同で調査し、霊長類標本の選別をおこなった。また、考古学院のヴ・テ・ロン博士や他のスタッフとベトナムにおける霊長類化石研究に関して情報交換をおこなった。
タイ北部チェンムアン炭田採掘風景。
大型類人猿を含む中新世中期〜後期の化石を産出する。
ハノイ市内にあるベトナム考古学院
HOPE Project<>
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