事業報告

事業番号18-016

野生ボルネオ・オランウータンのオスの社会行動に関する研究

報告者:金森 朝子

期間:2006年9月5日 〜 2006年12月16日

オランウータンは単独性の強い霊長類であるため、その社会行動を観察することは非常に難しい。調査地における個体識別及び血縁関係、各個体の遊動域や行動、食物、他の個体との遭遇率などを明かにするには、長期間のモニタリングから得られる基礎データの蓄積が重要である。ダナムバレー森林保護地域で野生オランウータンの調査を2004年より開始して3年が経過した。今年度は、2006年7月-9月には共同研究者の久世濃子氏、9月-12月には筆者がマレーシアに渡航し、野外調査と調査地整備を行った。

 

2006年9月-12月に筆者が行った調査では、定住個体を9頭追跡した。全観察時間は158時間21分であった。オランウータンの遭遇率は、9-10月までは80%以上であったが、降水量の多い時期11月-12月には65%以下に減少した。

定期的に行っている落下果実センサスとネストセンサスの結果では、2006年は、2004-05年の7-9月に観察された顕著な果実季は見られなかった。今回の調査期間中は、オランウータンの推定密度もこれまでの全期間平均である2.9頭/km2よりも低い1.6頭/km2を示した。オランウータンの採食に関しても、昨年同時期よりも果実を採食した時間割合が減少し、9-12月では特に樹皮や若葉を採食していた姿が目立った。

今回の特記すべき観察としては、これまで長期間モニタリングしていたオランウータンが豹に噛まれて死亡するという事例があった。筆者は、この個体が怪我による感染症で死亡するまでの7日間追跡し、遺体を回収した。回収した遺体は形態資料としてサバ大学に保管する予定である。

 

 


怪我をしたオランウータン(Juvenile Female:5歳)

 


オランウータンは、死ぬ前日に生姜を食べていた

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